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「死にたい」と漏らし、「特別警戒」していたのに 角田容疑者の自殺許した警察の大失態

   これまで6人の遺体が見つかり、今も3人が行方不明の兵庫県尼崎市の連続死体遺棄事件。主犯とされる角田美代子容疑者(64)が2012年12月12日朝、真相を語らぬまま留置所内で自殺したことで、一連の異様な事件の全容解明に疑問符が付いた。

   多くの人の命を奪ったとみられる角田容疑者が自殺することを、結果的に許してしまった兵庫県警への責任追及の声も出ている。

「真相解明の障害となるのは明らか」

   新聞やテレビ報道によると、角田容疑者は10月下旬以降、少なくとも4回にわたり「死にたい。どうやったら死ねますか」と兵庫県警の留置管理課員に話していた。不眠のため睡眠導入剤も飲んでいた。自殺を警戒した県警は特別要注意者として監視を強めていたという。

   角田容疑者が自殺を遂げた場所は、県警本部3階の留置所内の3人房。12月12日午前5時25分の巡回時には、他の2人とともに仰向けで寝息を立てており、同38分には同じ仰向けの状態で首元にTシャツを掛けていた。同55分の際も寝息を確認できたが、午前6時10分の巡回で寝息がないといった異常に気付いた。

   当直の男性警部補が同21分、長袖Tシャツの片袖を首に巻いて意識がない状態の角田容疑者を確認し、搬送先の病院で死亡確認されたのは午前7時15分だった。

   「この自殺は実に奇怪な話」。角田容疑者死亡のニュースをめぐり、テレビ朝日系列の「ワイドスクランブル」に出演した大沢孝征弁護士はそう話し、「房内に他に2人がいて、警察も特別警戒の衆人環視状態での自殺は珍しい」「横になったままの自殺はまれ」と指摘した。

   「悪の天才であり、稀代の犯罪者」と角田容疑者を位置づける大沢弁護士はまた、「どうやったら死ねますか」という同容疑者から警察官への問いについて、「見ててごらん。どんなに警戒しても私は死んでみせるから」という挑戦状だったのでは、と語った。

   番組内では、事実上の予告を受けながらも自殺を許す結果になった県警の責任についても言及した。大量殺人事件の主犯格が自殺した前例として、連合赤軍事件の森恒夫元被告のケースを取り上げ、コメンテーターの1人は「あの事件では森が自殺したことで、一部の被告は『すべては森のせいだ』と主張し始めた。尼崎事件も同じような形で真相解明に支障が出ることは明らかだ」と指摘した。

元警視庁警視「なぜ単独房で監視しなかったのか」

   日本テレビ系列の「情報ライブミヤネ屋」でも角田容疑者自殺のニュースを時間を割いて報じた。

   「警察の事故の中で、一番あってはならないのは留置所内の事故」。ゲストコメンテーターの元警視庁警視の江藤史朗氏は県警の対応を批判し、「戦後史に残る事件の被疑者を、なぜ単独房で徹底監視しなかったのか」と疑問を呈した。

   捜査への影響について江藤氏は、「角田容疑者が黙秘する中、関係者証言による立証を目指していたはず」としながらも、「角田容疑者の死で『自分は言いなりだった』と主張する共犯者が増えるのでは」と話した。続けて「仮に角田容疑者以外の人物の証言で事件を組み立てても、果たして本当なのかの究明が出来なくなった」と語った。

   角田容疑者の自殺について兵庫県警は「規程違反はなく、留置管理に問題はなかった」としているが、警察庁は事実関係の調査を始めた。

   一連の尼崎連続死体遺棄事件は、11年秋に市内でドラム缶に詰められた女性遺体が見つかったことから発覚。続いて民家の軒下などから遺体が発見されるなど事件は異様な様相を帯びている。ドラム缶死体遺棄では主犯格の角田容疑者を含め計8人が逮捕され、8人は疑似家族的な共同生活を送る中で、犯罪を広げていったとみられている。