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「イクメン」「弁当男子」は出世できないのか 伊藤忠社長「変わった趣味」論が波紋

   大手商社、伊藤忠商事の岡藤正広社長が「プレジデント・オンライン」に寄せた「若者論」の記事が議論を呼んでいる。自身の若いころと重ね合わせて、現在の若者世代を「温室育ち」と批評した。

   話は、子育てに積極的な男性を指す「イクメン」や、自ら弁当をつくって持参する「弁当男子」の社会人にも及んだ。岡藤社長はいずれにも全面的には賛同できないようで、弁当男子は「変わった趣味の1つという感じ」と述べた。

「草食系、ハングリーでない」とくくるのはナンセンス

   プレジデント・オンラインで2012年12月21日に掲載された岡藤社長のコラムの題名は「『イクメン、弁当男子』は、なぜ出世できないか」。やや煽り気味の見出しだが、団塊世代の岡藤社長が、現代の「元気のない若者男子」について「ハングリー精神のない『温室育ち』に見える」と断じた。

   子どもの頃から競争社会だったという岡藤社長は1974年に伊藤忠入社。当時を「ものすごく活気があり、ハングリー精神もあった」と振り返る。これに対して、社会が豊かになるにつれてハングリー精神や上昇志向が失われ、ゆとり教育により「強い気持ちを養う機会」が減ったと考える。

   さらに、昔の「男は仕事、女は家事育児」という役割分担と、「イクメン」に代表される現代の生活スタイルを比較。女性の社会進出により男性が育児に参加し、かつてのような男女の立場が「逆転」することに一定の理解を示しつつも、「女性と男性という性差による役割、つまりそれぞれの適応性はあるはずだ」と指摘。「その本質的なところはよく考えないといけない」と続けた。

   男性が弁当を自分でつくって会社に持ってくることは「ちょっと変わった趣味」と感じるそうだ。「弁当男子」になるよりは、職場の同僚と食事を共にして親睦を図ったがよい、と勧めている。

   だが、現代の若い男性は一様に「草食系」「ハングリーでない」と言えるだろうか。J-CASTニュースは、若者の就活事情に詳しい人材コンサルタントの常見陽平氏に記事を読んでもらったうえで意見を求めた。すると「(草食系などと)ひとくくりにするのはナンセンス。若者は非常に多層化、多極化しており、総合商社を目指す若者は肉食系です」と話す。従来の価値観にとらわれない、チャレンジする若者も出ており、岡藤社長の意見は「典型的なドヤ顔昭和親父の価値観、そして俗流若者論」とバッサリだ。

男性の育児休業取得者は2%でも「過去最高」

   イクメンに対する岡藤社長の考え方についても、常見氏は疑問を投げかける。日本人男性の家事育児参加の時間は世界的に少ないことで知られているからだ。厚生労働省が2012年7月25日に発表した、2011年度「雇用均等基本調査」によると、育児休業取得者の割合は女性が2010年調査と比較して3.5ポイント上昇して87.8%だが、男性は同1.29ポイント上がったものの2.63%と圧倒的に低い。さらにこの数字が「過去最高」だというから、男性の取得割合がいかに小さいかが分かる。

   男性と女性の性差、それぞれに適した仕事や役割があるという点は常見氏も同意するが、それでも「旧来の価値観で固定化」するのは反対だ。続けて、若者イコール「ダメ」と切ることが、若い世代を苦しめていると批判した。

   ツイッターやインターネット掲示板でも、岡藤社長の主張に反発する意見が多かった。「おっさんになるとどいつもこいつもこう言った似たような説教を始めるよな」と、「いまどきの若者論」にウンザリする人や、海外では男性が弁当を持参するのは当たり前の光景、という指摘もあった。