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サントリーが主力子会社を上場 調達する約5000億円は何に使うのか

   サントリーホールディングス(HD)は、主力子会社で清涼飲料などを手がける「サントリー食品インターナショナル」(東京都港区)を、東京証券取引所(2013年1月から日本取引所グループ傘下)に上場させる準備に入った。国内市場が頭打ちとなるなか、海外展開を加速するための資金調達が狙いだ。ただ、グループを統括する持ち株会社、サントリーHDはあくまでも非上場を維持し、創業家の影響力は確保する「いいとこどり」戦略で臨む。

   2012年12月18日発表したものだが、食品インターナショナルを上場する具体的なスケジュールや発行株数、発行価格などは公表しておらず、特に記者会見なども開かなかった。

東南アジアなどでM&Aを加速させる方針

   関係者によると、食品インターナショナルの時価総額は1兆円規模となる見込み。時価総額では、キリンホールディングスやアサヒグループホールディングスとそれぞれ肩を並べる。2012年の上場案件中、最大だった9月の日本航空(再上場、約7000億円)を上回る、久々の大型案件となる。資金調達額は最大で5000億円程度に上ると見られ、こちらもかなり大型だ。2013年初めに東証に上場を申請し、夏ごろまでの上場を目指しているようだ。

   サントリー食品インターナショナルは上場を機に、調達資金などを元手に成長が見込める東南アジアなど海外でM&A(企業の買収・合併)を加速させる方針だ。キリンやアサヒに肩を並べると言っても、世界の食品企業を見ればスイスのネスレ(18兆円)や米コカ・コーラ(14兆円)の足元にも及ばず、一足先にM&Aを進めた日本たばこ産業(JT、4兆7000億円)の背中も遠いのが実情だ。

   これまでも2009年にニュージーランドの飲料大手、フルコアを約750億円、仏オランジーナ・シュウェップスを約3000億円で買収したが、「2020年に売上高2兆円(現状の2倍)」を目指し、海外展開の強化を急ぐ。

サントリーHD本体は上場しないまま子会社を

   サントリー食品インターナショナルは2011年12月期の売上高が9706億円で、サントリーHD全体の5割超を占める主力子会社。飲料の国内シェアでは日本コカ・コーラに次ぐ2位の規模。しかし、サントリーHD本体の上場に踏み切らないばかりか、サントリーHDは食品インターナショナルの上場後も、株式の過半を保有し続けると見られている。

   親会社=持ち株会社を上場し、子会社は非上場とするのが普通で、キリンやアサヒはそうしている。サントリーHDの対応は異例だ。

   これにはサントリーHDの株式の9割を創業家の資産会社「寿不動産」が保有していることがかかわる。HDを上場すれば、創業家の持ち分が9割のままということは考えにくい。キリンHDとの経営統合が破談したのも、創業家の支配力をめぐる調整がつかなかったためだ。外部の人間に余計なことを言われたくない創業家が自ら支配力を弱めようとするはずがない。酒を扱う「サントリー酒類」(東京都港区)の上場を見送るのも、短期的な利益を求める市場の「干渉」から祖業を守ため、との見方がある。

   社風の「やってみなはれ」精神の発揮を期待する向きも少なくない。そんな独特のオーナー経営に、資本市場がどのような評価を与えるか、注目される。