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ヴァージン・ブランソン会長が捕鯨批判 「イルカを殺すのを止めてください」

   英ヴァージングループの創業者で会長のリチャード・ブランソン氏(62)が公式ブログで、日本のイルカ漁の中止を求める書き込みをした。

   日本国内でも話題になったドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」を見て感銘を受けたのがきっかけのようだ。コメント欄ではブランソン氏を称賛する声が大半で、日本が一方的に非難される展開になっている。

   ブランソン氏は1970年に「ヴァージン・レコード」を立ちあげ、世界各国で「ヴァージン・メガストア」を展開していることで知られる。84年にはヴァージン・アトランティック航空を設立。88年からは日本にも乗り入れている。英国経済への貢献が評価され、2000年には王室から「ナイト」の称号を与えられている。

   09年には、スーダン西部のダルフールでの紛争に抗議してハンガーストライキを行うなど、人道支援活動家としての一面もある。

「ザ・コーヴ」を「優れた映画」と評価

ブランソン氏のブログ。映画「ザ・コーヴ」の画像が貼り付けられている
ブランソン氏のブログ。映画「ザ・コーヴ」の画像が貼り付けられている

   ブログは13年1月8日付け。「手遅れになる前にイルカを殺すのを止めてください」というタイトル。日本人にメッセージを伝える強い意志があるようで、英語以外に日本語の翻訳も掲載されている。ブログは

「私は日本が好きです。だから、イルカを大量に殺している日本の国や人々に国際的な非難が向けられるのを見ると、とても悲しい気持ちになります」

と日本人に対する思いをつづっており、「ザ・コーヴ」を「優れた映画」と評価。映画を見た時は「私たちはみんな泣いてしまいました」と振り返っている。

   「ザ・コーヴ」は09年に米国で公開。和歌山県太地町(たいじちょう)で伝統的に行われているイルカ漁の残酷さを強調する内容で、隠し撮りなどの手法には批判も出た。10年には日本でも上映されることになっていたが、「反日的」などと抗議が殺到し、多くの映画館で上映が中止に追い込まれた。東京国際映画祭でも上映が危ぶまれたが、隠し撮りされた漁業関係者の顔にモザイクを入れるなどした上で上映された。

「手遅れになる前に」欧米が捕鯨を中止したことを評価

   ブランソン氏のブログでは、

「西洋の私たちは、インドの虎などの動物に恐ろしく残虐なことをしました。20世紀の初めごろ、アメリカの最大産業のひとつは捕鯨だったので、セミクジラなどの種は絶滅寸前まで獲りつくされました。しかし私たちは幸いにも、手遅れになる前に、自分たちが何をしていたかを知ることができました」

と欧米の歴史を振り返る形で、捕鯨を取りやめたことを評価。これと対比する形で、日本については、

「IWCによる商業捕鯨禁止を支持していない国のひとつなのです」

と指摘し、日本でも反捕鯨活動が起こっているとして、

「日本の若い人たちが声を上げることで、海で最も美しい2つの種であるイルカと鯨の殺害が止むことを願っています」

と、期待を寄せるコメントをしている。

コメント欄には「Thank you Sir Richard!」が多数

   ブログには、フェイスブックと連動させる形でコメントを付けられるようになっているが、現時点で170件強あるコメントのうち、

「Thank you Sir Richard!」

と、ブランソン氏が意見表明したことを歓迎するものが大半だ。

「完全なる野蛮行為を白日の下に晒したのは、非常に良いこと」
「問題のひとつが、日本人はイルカを単なる魚のような種としてしか見ていないこと」
「この(ブランソン氏の)言葉を拡散して、虐殺をやめさせないといけない」

と、日本を非難する言葉も多いが、日本語の書き込みや、日本を支持する書き込みはほとんどない。日本人が書いたと見られる日本語の書き込みは、

「産業として鯨・虎・象を狩り尽くそうとした西洋諸国の過去と、文化保護としての日本の捕鯨・イルカ漁を区別しない議論に意味は無い」

という1件しか確認できなかった。英語のコメントでも、

「多くの日本人にとって、『ザ・コーヴ』は日本への偏見に満ちた映画」

といった反論が数件見つかる程度だ。