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「美味しんぼ」原発問題に挑戦? 事故に揺れる福島県の食事情を描いて波紋

   人気漫画「美味しんぼ」がビッグコミックスピリッツ(小学館)での連載を再開し、原発事故に揺れる福島県の食事情を描いて話題になっている。

   爆発で焼けただれた原子炉建屋の様子が大きく描かれ、その前でライバル関係の親子が対峙する。美味しんぼの「福島の真実」編は、こんな巻頭ページでスタートしている。

原作者・雁屋哲さんの思い入れが背景に

福島舞台の意図は?
福島舞台の意図は?

   美味しんぼは、連載がスタートして2013年で30周年を迎えた。1月28日発売号で始まった新シリーズでは、「究極のメニュー」を担当してきた新聞記者の山岡士郎が、原発事故が起きた福島の真実を確かめるため、上司に取材の相談をする。

   取材は上司から許可が下りたが、ライバル紙と共同取材の条件付きだった。そこには、「至高のメニュー」の後見人で実父の海原雄山のある企みがあって…というストーリー展開だ。

   新シリーズについては、ツイッターなどで、「どう描かれるか楽しみ」「今編も美味しそうな物が沢山出てきますように」と期待する声が上がった。その一方で、原発事故を前面に押し出していることから、「もはやグルメ漫画でなくなってる」などと波紋を呼んでいる。

   異例の重いテーマになっているのは、原作者の雁屋哲さんの思い入れにあるようだ。

   そのブログによると、雁屋さんは新シリーズのために、11年11月からの1年間で福島県を3回も訪れて自ら取材した。若いころに人情や食文化に触れて福島を愛するようになったことから、原発事故で問題意識を持ったというのだ。

「福島の真実が伝わっていないからだよ」

   今回の連載では、取材で出会ったアイガモ農法の農家も紹介している。この農家は、放射線量が比較的低いとする会津若松市で米作りをしているが、風評被害に苦しんでいると山岡士郎らに告白する。

   山岡らも、放射性セシウムなどが不検出なのを知って、販売に協力を約束する。そして、家庭でその米を味わう山岡に、「こんな美味しくて安全なものを消費者が買わないというのも、福島の真実が伝わっていないからだよ」と語らせている。

   雁屋哲さんはブログで、ガイガーカウンターを持って取材した様子を生々しく語り、2012年9月6日には、福島の真実編を「人生で一番厳しいマンガ」と明かしていた。原発政策を批判して物議を醸したこともあるだけに、ネット上では、こんな事態を生んだ政治のあり方などを批判するストーリーになるのではとの憶測も出ている。

   もっとも、連載の初回では、海原雄山が山岡に「おまえはそろそろ自分の生えてきた根を知るべきだ」という意味深なメッセージも残している。原発以外のテーマも、ストーリー展開の重要な要素になっている可能性はありそうだ。