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驚きの「年収5億円」 世界を股にかける「凄腕」ファンドマネジャーの実像とは?

   スイスからの一時帰国中に殺害されたとみられる霜見誠さんと美重さん夫婦。資産運用をめぐるトラブルによる殺害ともいわれるなか、「凄腕ファンドマネジャー」だったという霜見さんの生活ぶりが少しずつ明らかになってきた。

   たしかに優秀な「ファンドマネジャー」は「億」を稼ぐと聞くが、報道では「年収5億円」というのだから驚く。

「パソコン1台に携帯3台」を駆使する多忙な仕事ぶり

   複数のメディアの情報によると、霜見誠さんと美重さん夫婦は「3年ぐらい前に、日本は税金が高いから」といって、スイス・チューリッヒに住むようになった。

   日本にも頻繁に帰国。最後に生存が確認された東京・銀座の自宅マンションのほか、六本木や赤坂、千葉市にも高級マンションを所有し、フェラーリとベンツの2台の高級外車に乗っていたという。

   趣味は夫婦でヨット。子供がいないこともあってか、2匹のトイ・プードルを溺愛していたようで、愛犬家を招いた犬の誕生会では高級な青森県大間産のマグロを食べさせたという。美重さんのものとみられるブログによると、わざわざ日本からスイスにトリマーを呼び寄せるなど、セレブ暮らしを楽しんでいたようだ。

   夫の誠さんは、リヒテンシュタインに本社がある投資ファンドの敏腕マネジャーとして活躍していた。宮崎県出身。熊本県内の大学を卒業後、東京に本社がある証券会社に入社。営業部門を経て国際部門に異動。海外の投資家らと交流を深めたのをきっかけに、約20年前に独立したという。

   証券会社で同僚だった男性の証言では、「人懐っこく明るい性格で、顧客の信頼も厚かった」。半面、「野心家で会社より自分のために人脈を広げ、多少のリスクがあっても、ハイリターンを狙っていくタイプだった」とも話している。

   その仕事ぶりは、「優秀なトレーダーで、飲みに行く時もパソコン1台に携帯3台を持っていた」と、超が付く多忙ぶりだった。時価総額で約300億円の資産を運用し、6、7年前の年収が「5億円」にのぼっていたという。

   優雅な生活ぶりからは「年収5億円」もウソではなさそうだし、たしかにファンドマネジャーの年収は高額で知られてもいる。そうだとしても、そんなにも高い収入を得られるのだろうか――。

投資家は「敏腕マネジャー」について回る

   国際金融アナリストの小田切尚登氏は、「証券会社に勤めるサラリーマンのファンドマネジャーではどうかと思いますが、海外でまさに『腕一本』でやっていたのであれば、可能性はあります」と話している。

   ファンドマネジャーの報酬は、大きく2つ。一つは手数料収入(信託報酬)で、これは資産残高に応じて、毎年2~3%が確実に得られる。たとえば、資産残高が100億円あれば、2億円のもうけ。運用資産が多ければ多いほど、ファンドマネジャーは儲かる。

   もう一つは成功報酬。これは契約ごとに異なるが、運用した儲けの一部を得られる。たとえば、20%で契約した場合は年間10億円儲かれば、2億円が成功報酬として得られるわけだ。

   一方、運用損失した場合には、成功報酬は得られないが、信託報酬は得られる。損失を肩代わりすることもない。

   小田切氏は「日本でも証券会社などに勤めるファンドマネジャーは運用成績によってボーナスをもらうことはありますが、あくまでボーナス。欧米では投資ファンドの手法が定着していて、実績を上げたファンドマネジャーが信託報酬から成功報酬まで得られます。運用実績のある、凄腕のファンドマネジャーに投資家がついていることもあります」と説明する。

   おそらく、霜見誠さんもこれまでの証券会社時代や、投資ファンドで相当高い運用成績を収めていたであろうことがうかがえる。

   ただ、いまは「金融緩和で金利が付かない時代なので、ファンドマネジャーにとって運用益を上げることはかなり難しくなっています」とも、小田切氏は指摘する。