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アベノミクス効果で出版界にマネー誌「特需」 「会社四季報」もほぼ完売

   株式投資には欠かせないとされる「会社四季報」新春号(2012年12月発売)や、マネー情報誌の月刊「ダイヤモンドZAi」3月号(13年1月発売)がほぼ売り切れの状況になっている。

   アベノミクス効果で円安・株高傾向が続くなか、個人投資家が日本株に回帰してきたことが背景にあるが、出版界にとっては思わぬ「特需」といえる。

「日本株」回帰の個人投資家が購入

   「会社四季報」は1936年創刊の季刊誌。すべての上場企業の事業内容や株主構成、業績の推移などのデータを掲載していて、株式投資の銘柄選定などに活用できる。

   発行元の東洋経済新報社によると、「新春号」の部数は非公表ながら、前回の「秋号」(12年9月発売)と比べて5割増しの状況という。「社内は在庫切れの状態で、書店でも売り切れのところがあるようです」(営業推進部の加藤正俊副部長)と、売れに売れている。

   新春号は増刷しないが、3月に発売する「春号」については例年より多めの部数とする方向で検討。すでに同社には個人投資家や企業、書店などから、「1か月後に発売される次号への問い合わせもあります」と話している。

   また、取り上げている銘柄数をしぼった、会社四季報の入門版である「会社四季報プロ500」の新春号も「完売近くの状態」と絶好調だ。

   また、「ダイヤモンドZAi」(ダイヤモンド社)は最新の3月号で「2013年の最強日本株番付」を特集したところ、売り切れの書店が続出。アマゾンや楽天ブックスといったオンライン書店でもほぼ売りつくした。

   神門学編集長は、「3月号は通常(12万部)よりも部数を増やしたにもかかわらず、発売後2日で在庫切れの状態になりました。こんなことは初めてです」と驚く。

   前月号(12年12月発売号)も発売後2週間でほぼ完売状態となるなど、まさに「アベノミクス」効果は覿面だ。

   「ダイヤモンドZAi」は初心者から経験者まで幅広い読者層をもつが、「経験者、とはいえリーマン・ショック後の値下がりで取引を見合わせていた人が、最近の株高で取引を再開しているようです」と話し、そういった日本株に回帰している個人投資家が改めてマネー情報誌を手にしているようだ。

「日経マネー」は若者層や女性層も取り込む

   月刊「日経マネー」は2013年3月号(1月発売)で「1万円からの株主優待BEST100」を特集。発売元の日経BP社は、「アベノミクス前(12年11月)に比べて6~7割増、複数の書店で品切れの状態です」と話す。

   リーマン・ショック以降に株式投資を控えていた個人投資家が戻ってきたことに加えて、「日本株投資をはじめてみたいと思っている30歳代の若者層や女性の比率が従来に比べて多いことや、また将来の年金不安やインフレリスクに備えるためにこの機会に投資をはじめようという人たち」が、新たな読者になっているという。

   2月25日に「いま賢く稼ぐ! 日本株&投信」という臨時増刊号を発行。さらに3月11日には、サラリーマン投資家に人気のさわかみ投信の澤上篤人氏の緊急書き下ろし単行本を発行する予定と、チャンスを逃さない。

   東京証券取引所が公表する投資部門別売買動向によると、日本株の売買代金に占める個人投資家のシェアは12年11月の22%から13年1月には31%に上昇している。外国人投資家の買い注文が増えているのに加えて、個人投資家の売買も活発化してきた。それにより、12年11月末に9400円台だった日経平均株価は、13年2月14日には1万1300円台に急騰。じつに1800円を超す上昇だ。

   株価の上昇が続くことで、個人投資家の日本株への関心は高まるばかり。しばらくマネー情報誌が、出版界をにぎわすことになりそうだ。