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日米首脳会談がTPPのヤマ場 オバマ大統領の発言に注目

   安倍晋三首相が2月21日に訪米し、22日にオバマ大統領と首脳会談を行う。安倍首相は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に参加した場合、「聖域なき関税撤廃」が行われるのか否かをオバマ大統領にただし、米国側の「感触」を探るという。

   日本のコメなど農業分野の重要品目を関税撤廃の例外として認める「感触」を米国から得られれば、安倍首相はTPP交渉への参加を判断する見通しだ。外務省と経済産業省は米国が関税撤廃の例外品目を認める可能性があり、TPP交渉に早期に参加すべきだとする立場だが、農林水産省は米国がコメなどを例外品目として認める可能性は低いとみており、オバマ大統領の発言が注目されている。

米国は自国の砂糖や乳製品を「聖域」扱い

   自民党は2012年の衆院選で「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」との公約を掲げた。「聖域」の明確な定義はないが、コメ、小麦、牛肉、乳製品、砂糖など、関税が撤廃されれば輸入が急増し、地域経済や食料の安定供給に大きな影響が出る重要品目を指しているとみられている。

   JA全中はじめ農業団体は「TPPに参加すれば、コメなどの関税が撤廃され、国内の農業が崩壊する」と反対している。今夏の参院選を控え、JAを有力な支持基盤とする自民党は、安易なTPP参加表明は命取りになりかねないが、裏を返せば、コメなど重要品目の関税を守れるのであれば、TPP参加は可能というのが政府・与党の推進派の論理だ。

   そこで、日米首脳会談でのオバマ大統領の発言が注目される。そもそも米国の通商政策で重要品目は存在しないのか。農業分野で米国はTPP交渉参加国のオーストラリア、ニュージーランドと砂糖や乳製品をめぐり、関税撤廃の交渉を行っている。現在、米国は自国の砂糖や乳製品を保護するため、米豪FTA(自由貿易協定)で砂糖と乳製品を関税撤廃の例外品目とし、「聖域」扱いしている。ニュージーランドと米国の間にFTAはなく、米国はニュージーランドの乳製品に対しても高関税をかけている。

交渉が妥結直前にならないと、個別品目の扱い決まらず

   米国が自国の産業を保護するため、TPPでも砂糖と乳製品の関税を維持したいのに対して、豪州、ニュージーランドはTPPの原則に基づき、例外なく関税を撤廃するよう求めている。しかし、これら各国の利害が絡む関税撤廃交渉には時間がかかるのは必至で、TPP交渉全体の枠組みが妥結する直前にならなければ、砂糖や乳製品など個別の関税交渉も最終決着しないとみられている。

   日本はこれまで世界貿易機関(WTO)協定に基づき、関税撤廃で地域経済や食料の安定供給に大きな影響が出るコメ、麦類、砂糖、乳製品などを関税撤廃の例外品目としてきた。仮にTPP交渉に参加した場合、日本は米国に対してコメなどを例外品目として認めるよう求める方針だが、「米国は農業分野で自国産業を保護する一方、他国には市場開放を求めており、日本の要求が認められる可能性は極めて低い」(農水省関係者)というのが現実のようだ。オバマ大統領の発言を外務省がどう「翻訳」し、安倍首相がどこまで前向きな「感触」として表明するのか否か。TPP推進派、反対派のいずれにとっても、日米首脳会談が今後の分岐点となるのは間違いない。