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韓国で「アベノミクス」批判が過熱 「円安は沈黙の殺人者」と反日煽るメディア

   韓国で、「アベノミクス」によるデフレ対策に伴う円安進行に対する脅威論が過熱している。

   モスクワで開かれた20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明で、日本の「円安誘導」という名指しの批判が回避されると、これに韓国の中央日報(2013年2月18日付)は「(G20が)日本の円安政策に事実上の免罪符を与えた」と批判的に伝えるなど、メディアはこぞって噛みついた。

韓国の輸出、2月の大幅減少は「円安被害」?

   ウォン相場は2012年6月初めの1ドル1180ウォン前後を底に、半年で110ウォン超も値上がりし、一時は1070ウォンを割り込んで推移。2013年2月27日の東京外国為替市場は1ドル1085.37ウォンと、高止まりしている。

   サムスン電子や現代自動車など、韓国経済をけん引してきたグルーバル企業の強みはウォン安による低価格競争だった。

   ところが、12年12月に安倍政権が誕生して「アベノミクス」政策を打ち出すと、一気に円安が進んで日本の自動車や電機メーカーが勢いを取り戻そうとしている。

   2月27日付の中央日報によれば、韓国の2013年2月の輸出が大幅に減少する見込みという。2月1日~20日の輸出金額は前年同期比10%減の258億4000万ドルで、2月全体では8~10%減少すると推定した。2月は旧正月連休で操業日数が前年より減ったこともあるが、1日あたりの平均輸出増加率がマイナスとなったことで「円安被害が本格化?」との見出しで報じている。

   たしかに、このまま円安・ウォン高が定着すると、海外市場での韓国の相対的な競争力が長期にわたって下落することになり、結果的に韓国経済の成長を支えてきた輸出企業が大きく失速。中小企業の業績も悪化し、さらに国内経済が冷え込む可能性も否定できない。

   「円安脅威論」を展開する韓国メディアは、「円安は沈黙の殺人者」(中央日報)などと痛烈に批判する。本来、円安は韓国にとっても家電製品をはじめ、衣類や日用品など質の高い日本製品が安く手に入るようになるメリットもあるのだが、竹島問題と連動して、短絡的に反日感情を煽っているようでもある。

円安批判は「お門違い」

   韓国経済に詳しい、第一生命経済研究所・主任エコノミストの西濱徹氏によると、現在のウォン高の要因は、もともと韓国経済が経常黒字を抱えていることや、12年夏以降に格付け機関が相次いで信用格付けを引き上げたこと、欧米との自由貿易協定(FTA)が発効したことがあるという。

   「アベノミクス」とは関係なく、むしろ「FTAにより、欧米向けの輸出競争力では日本を含む周辺国よりも数段高まっています」と指摘する。さらに米国経済が回復基調にあるのだから、韓国の企業活動は高まっていてもおかしくないはずなのだ。

   ただ、一方で為替市場をめぐっては、韓国の金融当局が「覆面介入」してウォン安誘導しているとの疑念が付きまとっていた。

   米国では韓国とのFTAが発効したことを契機に、「為替操作国」として調査する動きがあって、これまでのように韓国内の輸出企業が利するようなウォン安誘導を、公然と繰り返すわけにはいかなくなってきた。韓国としては、国内の輸出企業の優位性を維持する「カード」がなくなってきたため、日本の円安を食い止めたい思いばかりが強まっているということらしい。

   「日本がG20でも主張したように、『アベノミクス』は結果的に円安になっていますが、脱デフレのための国内政策です。円安によって海外市場での日本の輸出企業の競争力がついてきたからといって円安批判を繰り返すのは、いわばお門違いといえます」と、西濱氏は話す。