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シャープ、片山会長らに退任論 「経営責任」にケジメつける

   経営再建中のシャープに、片山幹雄会長(55)の退任論が浮上している。

   片山氏は2012年4月に業績悪化の責任をとって社長から代表権のない会長に退いていたが、同社が巨額赤字を招いた液晶パネル事業の「旗振り役」だったため、経営責任を明確にするべきではないか、というのだ。

銀行主導の再建に「地ならし」?

片山会長らの退任論が浮上?(写真は、「シャープ」のホームページ)
片山会長らの退任論が浮上?(写真は、「シャープ」のホームページ)

   シャープは2013年5月14日に、この3月期決算と中期経営(3か年)計画を発表する予定。現在、中期経営計画の策定に向けて作業を急いでいるが、その「中身」は高画質・省電力の新型液晶パネル「IGZO」(イグゾー)の販売拡大を進める、主力の液晶パネル事業の再建と、資産売却や資本増強による財務改善策が柱となるもよう。片山会長の退任論は、こうした中で浮上したようだ。

   ただ、シャープは5月7日、片山会長の退任について、「当社から発表したものではありません」と話している。14日に片山会長の退任が発表されるという報道にも、「決定している事実はなにもない」としている。

   シャープの13年3月期連結業績は、5000億円規模の最終赤字となる見通し。資金繰りも綱渡りの状態が続いており、主力取引銀行のみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行が9月に期限を迎える2000億円の転換社債の償還に充てる原資として、1000億円の追加融資枠の設定を検討している。その前提として、銀行は役員の受け入れと、資産売却や公募増資などの自助努力をシャープに求めている。

   一方、シャープは12年夏に取引銀行に再建計画を提示したものの、実行できたのは約3000人の人員削減だけ。新たな経営計画の策定にはみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行も加わっているが、奥田社長以外の複数の社長経験者がいまだに経営に関与していることが経営判断の遅れにつながっていることを懸念している、と伝えられている。

   今回、片山会長の退任と同時に、町田勝彦相談役(69)と辻晴雄特別顧問(80)の退任も取沙汰されており、取引銀行の意向が強く働いていることがうかがえる。片山会長らの存在が経営再建の「足かせ」になりかねないとみているようだ。

資本提携の迷走で出資金集まらず

   そもそも、片山幹雄会長の退任論が浮上したのは、片山氏が社長在任中に行った液晶パネル事業の大型投資が失敗し、経営悪化の原因となったためだ。半面、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との資本提携が頓挫して以降、片山会長が米クアルコムや韓国のサムスン電子との資本提携交渉に奔走したとされる。

   それもあって、片山会長と奥田隆司社長との役割分担が不明確との指摘も漏れていて、片山、奥田両氏の「2頭体制」の解消を求める声があった。

   シャープは片山会長と奥田社長との役割分担について、「資本提携についての決定は、最終的には奥田(社長)が決めています。役割分担という意味では12年7月から13年3月まで、奥田社長が片山会長に液晶やデバイス事業の経営指導について委託していたことがあります」と説明する。

   さらには2012年に役員を増やしたことで、ガバナンス体制が不明確になったとの指摘もある。

   とはいえ、シャープの資本提携は、米クアルコム、サムスン電子の出資金額がともに約100億円にとどまっており、最大の出資予定先だったホンハイには2013年3月28日の出資期限までに払い込んでもらえなかった。

   それが現在の経営基盤を危うくしているともいえ、銀行の支援を前に、これまでの経営責任を明確にする必要があったともいえそうだ。