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「印鑑」はもはや必要ないのか 千葉市長ツイートに印鑑業者が大反発

   再選を果たしたばかりの熊谷俊人千葉市長(35)が、「ハンコ行政」にツイッターで苦言を呈したところ、印鑑業者らの反発が相次ぎ、ネット上で論議になっている。

   熊谷俊人市長が口を開いたのは、2期目市政の抱負を述べたタイミングだった。

決裁などをまず自筆のサインに改めるよう指示

議論のきっかけに
議論のきっかけに

   2013年5月28日のツイートで、熊谷氏は、役所には「印鑑を忘れた市民に出直しさせることを不思議に思わない体質」があるとして、「役所文化の象徴:ハンコ」と持論をぶち始めた。

   熊谷氏によると、市役所では、内部決裁などをほとんど押印で行っているほか、毎日の出勤簿、出張命令簿などすら印鑑を使っているそうだ。それは電子署名などオンライン化の障壁にもなっているとし、今後は決裁などをまず自筆のサインに改めるよう指示を出したことを明らかにした。

   これに対し、役所体質に染まっているらしい幹部職員からは、こんな不満も漏れたという。

「ハンコだと押した時の気分などで綺麗だったりずれていたりする。あとで振り返ってその時の自分の気持ちを思い出せる」

   サイン化の指示後も、ハンコらしくするためか、「走り書きはダメ。本人と分かるよう綺麗に」とずれた言葉を部下にかけていたそうだ。

   役所体質は、市民サービスにも現れており、印鑑登録証のカードを忘れると、現状では、印鑑証明を発行できなくなっている。それではまた足を運んでもらうことになるため、熊谷氏は、運転免許証などで本人確認できれば発行するよう、市の印鑑条例を改正するとツイッターで表明した。

   こうした熊谷氏の発言は、「ハンコ文化」そのものも否定するものだと映ったらしく、印鑑業者からは異議の声が上がった。

「言ってることは解るが、千葉の印章店が全滅することに関して何の対応も書かれていない。負の問題が有ることを語らないのはいかにもお役所的だ」

それでしか本人証明ができないのは不便だと主張

   これは、ある業者がツイートしたものだ。また、家業の印鑑職人目指して勉強中という女性は、「我々の仕事を奪う気ですか?サインだけでやっている国に比べてサインと印鑑二つのセキュリティを施した方が犯罪を防げます」と熊谷俊人市長に反論した。

   これに対し、熊谷氏は、市民の利益と天びんにかけてハンコ行政を改めようとしており、そうしなければ何もしないのが最善ということになってしまうとツイッターで説明した。また、印鑑のセキュリティ性については、「三文判OKな社会を鑑みればセキュリティ論は無理がある」と述べた。

   さらに進んで、製紙産業を例に挙げ、電子化が進んでも行政が保護していないとし、印鑑証明そのものについても、それでしか本人証明ができないのは不便だと主張した。印鑑は否定しないものの、それありきではなく、電子証明なども活用できるのではないかと言っている。

   ネット上では、熊谷氏の主張について、「印鑑というシステムを無くすとなると意外と不便」などの疑問もある。しかし、印鑑業者の既得権益を守るのではなく、「時代に応じた別の証明手段に変更するべきだ」という意見が多い。

   千葉市の市民サービス課では、印鑑証明は、家を買うなどの場合に求められることが多いとした。それを止めて、電子証明に切り替えることには否定的だ。

「提出先が求めるというならば、行政が印鑑証明を出さないわけにはいきません。印鑑の文化に関わることですから、国全体の問題になると思います」