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「甘いポテトチップス」「にんにく」「ラーメン」… スナック菓子に「変化球」商品続々登場

   ポテトチップス、カラムーチョ――スナック菓子業界にはメジャー・マイナー問わず、長年愛される「ブランド」が少なくない。ところがそんなブランドの1つだった、いずみ製菓の「ポテトスナック」(1988年)が原材料高騰などのため姿を消すこととなった。

   おなじみの商品もうかうかできないご時世だ。各社は従来のブランドに手を加えた「変化球商品」を出すなど、攻めの姿勢で消費者の心をつかもうとしている。

やや高めの年齢層の女性も狙う

各社がさまざまな商品を展開するスナック市場。その取り組みとは(イメージ)
各社がさまざまな商品を展開するスナック市場。その取り組みとは(イメージ)

   業界最大手のカルビーは2012年度、食品製造販売事業では前年度を約1割上回る1769億9300万円の売上高を記録した。

   同社が好調の要因の1つに挙げるのは、各種限定商品の成功だ。そうした中の1つが、ポテトチップス「贅沢シリーズ」。「塩辛い」味付けが定番のポテトチップスにあえて甘味を合わせるというもので、たとえば2012年に発売した「ポテトチップス 贅沢バニラ」は塩味のポテトチップスにバニラクリームをトッピング、「冷やして食べる」というコンセプトや、塩と甘みの混じる味わいが話題を呼んだ。

   スナック菓子のシーンは、「大勢で集まって」「酒のつまみ」「テレビのおとも」といったものになりがち。一見キワモノに見える「甘いポテトチップス」はそんな状況を脱却するため、やや高めの年齢層の女性を中心とする新たな市場の開拓を目指したものだ。

   こうしたユニークな商品について同社の担当者は、「どんな味なのか想像できそうでできない、面白さ・楽しさを伝えたい」と語る。また、この夏にも、あるドリンクとコラボした意外な新食感のスナックを発売するとのことで、これも乞うご期待、だそうだ。

ガッツリ味で男性コアユーザーにアピール

   新たなファン層開拓を狙うカルビーの戦略とは逆に、既存ブランドの長所を生かすアプローチもある。

   たとえば「激辛」ブームの立役者として知られる湖池屋「カラムーチョ」だ。5月から登場した「カラムーチョ にんにくマシマシ ホットチリ味」は、カラムーチョの売りであるにんにくの風味をさらに強め、中核ユーザーである男性層への働きかけに努めた。「ここまでにんにく味だとは……!」と驚く人もいるほどの強烈さはネットでも話題になり、販売も好調だとか。定番商品に留まらず、こうした「変化球」を出すことの効果を、湖池屋の担当者はこう語る。

「新しい味を消費者に楽しんでもらうと同時に、ブランド本体の良さも再認識してもらえる。ブランドを陳腐化させずいつも新鮮に楽しんでもらうためには、一本調子ではなくこうした違った味を出すことも大切なんです」

「漫画」パッケージで話題に

   発売から54年のロングセラー「ベビースターラーメン」(おやつカンパニー)も5月13日、有名ラーメン店とコラボした「山岸一雄ファミリー銘店監修 ベビースターラーメン3種パック」を発売した。「ラーメン」つながりという、やはり同ブランドの強みを生かした製品といえる。

   味だけではない。パッケージでの「コラボ」もある。こちらも発売42年の老舗ブランド「キャラメルコーン」(東ハト)は2011年から3年連続で、有名漫画家にパッケージイラストを描いてもらう企画を実施している。

   ブランドにとって文字通り商品の顔といえるパッケージを期間限定とはいえ変えてしまう大胆な試みだが、「思った以上に好評」(担当者)とのことで、具体的な数字は未公表だが売れ行きにも毎年好影響をもたらしているという。

   全日本菓子業界の調べによれば、2012年のスナック菓子生産数量は約22万5000トン、小売金額は4102億円。ここ10年ほどは生産数量などに大きな動きはなく、比較的堅調な推移が続く。一方で最近はコンビニやスーパーなどによるプライベートブランド製品の進撃も目立ち、各社は独自の価値を生むことに努めている。