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iPhone次期モデルの「売り」は 「廉価版」と「5.7インチ大画面」?

   米アップルが「アイフォーン(iPhone)」の次期モデルとして画面を大型化した端末や、パーツを一部変えた低価格版を出すとの報道が流れた。

   スマートフォン(スマホ)はこれまでiPhoneが時代をリードしてきたが、大画面化では韓国サムスン電子の「ギャラクシー」が先行し、シェアを伸ばしている。イノベーションで知られるアップルだが、追従せざるを得なくなったかもしれない。

「ギャラクシーS4」の5インチを上回る画面

4S、5の次は「5S」か
4S、5の次は「5S」か

   今やiPhoneの次期モデルを巡る報道は「年中行事」となってきた。アップルは例年6月に開発者向けイベントを開催しており、2013年も6月10日から開かれた。期間中、iPhoneに使われている基本ソフト(OS)の新バージョンが発表された一方、期待されたiPhoneの新作発表は見送られた。

   だがロイター通信が2013年6月13日、複数の関係者の話として2013~14年に新たなiPhoneが次々と市場に投入される予定だと伝えた。今秋には、現行のiPhone5の後継となる「5S」を発売。「5」と同じ4インチサイズのディスプレーで、指紋認証機能を搭載するそうだ。同時に、本体がプラスチック製の廉価版をラインアップに加えるという。さらに、これまで白と黒の2色だけだった本体色が5、6色に増えるようだとしている。

   廉価版はこれまでもたびたび発売のうわさが出ている。米調査会社IDCは、iPhoneを高額だととらえる消費者がおり、今後も成長を維持するには廉価版モデルの開発が欠かせないと分析していた。

   ロイターは2014年には、4.7インチと5.7インチの2種類の大型画面iPhoneが登場する可能性を示した。競合するサムスン電子の最新モデル「ギャラクシーS4」は画面サイズが5インチ、ペン操作タイプの「ギャラクシーノート2」は5.5インチと、いずれも「iPhone5」よりずっと大型だ。これらを上回る5.7インチとなれば、これまでのiPhoneのイメージと相当変わるかもしれない。

   米調査会社コムスコアによると、2013年4月のスマホシェアはアップルが39%、サムスンが22%だった。だが、ギャラクシーS4発売後の5月の販売実績ではサムスンが上回っていたとの別の調査結果もある。両社の争いはし烈だ。日本国内ではiPhoneの優位は動かないが、BCNランキングの2013年5月の携帯電話ランキングではギャラクシーS4が4位に入り、徐々に利用者を増やしているようだ。

オリジナリティーよりも市場の要求にこたえる

   アップルは次期iPhoneに関して正式なコメントをしていない。2012年9月に発売されたiPhone5は、それ以前と比べると爆発的なヒット商品とはならなかったとも言われている。「iPhone神話」が崩れるのか、それとも新型が消費者に強いインパクトを与えられるか。

   角川アスキー総合研究所主席研究員の遠藤諭氏はJ-CASTニュースの取材に、「廉価版は必須」と話した。世界市場でのiPhoneのシェアは20%程度と言われており、日本での支持率の高さを考えると割合はかなり低い。実は中国をはじめとする新興の大型市場で人気が高いのは低価格スマホで、これこそがiPhoneの真の「ライバル」になっているのだ。

   例えばインドでは、スペックはiPhoneに劣るものの、1万円で買い切りのスマホが人気。これに対抗するためにはアップルも廉価版を出せばよい。一度iPhoneを買ってもらえば、「iTunes」によるコンテンツ購入を継続することもあって、新型iPhoneが出るたびに買い換える可能性が高くなるためだ。「新興国市場を先手必勝で取りに行く」うえで欠かせないアイテムになると、遠藤氏は強調する。

   廉価版ニーズはほかにもある。角川アスキー総研のデータによると、「iPod Touch」の所有台数はiPhoneの60%程度ある。つまりiPhoneより安い価格で同じOSで動く端末を購入する層が相当数いる証拠だ。廉価版を出せば、この層が動く可能性がある。

   では「大画面版」はどうなるか。遠藤氏は、米グーグルのOS「アンドロイド」機種のうち4.7インチ以上のディスプレー搭載モデルが人気なことからも、アップルが追従するとみる。「個人的には今のサイズ感を守ってほしいですが、オリジナリティーの問題よりも市場の要求にこたえざるを得ないのかもしれません」。