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サムスン「ギャラクシーS4」伸び悩む アップルへのチップ供給も終了? 先行き不安

   世界のスマートフォン(スマホ)市場で、米アップルと「2強」に君臨する韓国サムスン電子の雲行きが怪しい。ヒットを飛ばしてきたスマホ「ギャラクシー」シリーズの最新版が伸び悩んでいるのだ。

   競合するアップルとは、スマホの特許を巡る訴訟合戦が今も続く。一方でアップルはプロセッサーやメモリーチップの最大顧客。だがその関係も間もなく終えんを迎えるとの報道が流れ、将来に不安が漂う。

7月には10~15%減産、5月の半分になるとの報道

日本では「ツートップ」だが「iPhone 5」を追い抜けない
日本では「ツートップ」だが「iPhone 5」を追い抜けない

   サムスンの主力スマホ「ギャラクシーS4」の売れ行きが不振と伝えたのは、2013年7月1日付の米ブルームバーグ。4月26日に発売し、「世界初のフルHD有機ELディスプレー」「画面に触れなくても、指を近づけたり目を動かしたりするだけで操作できる」と高性能を押し出した端末だが、「革新的と受け止められていない高額な端末の購入を消費者が手控え」ていることから、市場で苦戦しているようだ。アナリストは「前機種と大きな違いがないため、S4を購入する相応の理由が消費者には見当たらない」と厳しく評価。この影響もあってか、サムスンの株価は6月に12.7%と大幅に下落したという。

   日本国内でも爆発的なヒットとはいえない。ギャラクシーS4は、NTTドコモが「ツートップ戦略」の一環として大々的にプッシュする。BCNランキングを見ると、発売翌月の5月は初登場で4位。決して悪くはないが、「ツートップ」のもう一角に選ばれたソニー・モバイルコミュニケーションズの「エクスペリアA」は堂々の首位だ。最新の6月17~23日の順位でも4位にとどまり、「アイフォーン(iPhone)5」を抜いてのトップスリー入りがなかなか果たせない。

   韓国のオンラインIT専門紙「ETニュース」は6月20日、サムスンの無線事業部門がギャラクシーS4を月間ベースで10~15%減産する計画だと報じた。これで7月の生産発注数は650万台となり、5月の約半分に減るのだという。経営陣は「S4」だけではシェア拡大が望めないとの判断から、「ギャラクシーノート3」や「ギャラクシー4Sミニ」といった新モデルを続々投入する方針だと伝えている。

   好調だったスマホ事業に陰りが出てきたとなると、サムスンとしても安泰とは言えない。これまで経営を支えてきたディスプレーや半導体事業も、決して順調ではないからだ。

直近の四半期決算では前期比「マイナス成長」

   2013年1~3月期のサムスン電子の連結決算は、前年同期比で増収増益を達成したものの、前期比では売上高が6%減、営業利益も1%減となった。スマホがけん引役となる半面、欧州を中心に経済の停滞が続いた影響でテレビや家電製品の需要が伸び悩んだ。液晶パネルも不調だった。

   半導体部門では世界的にパソコン向けDRAMの需要が低下。その一方で、スマホ向けメモリーのニーズは旺盛だ。だが長期的に見ると頭の痛い問題が浮上している。アップルとの関係悪化だ。

   両社はスマホの特許を巡り、世界各地で係争中。かつての親密ぶりとは比べようもないが、それでも取引関係は続いている。アップルのiPhoneや、タブレット型端末「iPad」の心臓部には、サムスン製のチップが搭載されているのだ。だが、双方を結ぶ「細い糸」も今や切れる寸前と言えるかもしれない。

   米ウォールストリートジャーナル(WSJ)電子版は7月1日付で、アップルが台湾の半導体メーカーと、2014年からチップの供給を受ける契約を交わしたと伝えたのだ。既にアップルは、サムスンと「敵対関係」となったことからiPhone向けディスプレーパネルの購入を中止し、iPad向けの発注量も減らしている。それでもサムスンにとっては、今でもプロセッサーやメモリーチップを購入する最大の顧客のひとつだ。アップルを失えば、事業面で大きな打撃になるのは間違いない。

   契約が発効するのは2014年以降で、しばらくは「猶予期間」がある。WSJは、アップルがサムスンと完全に「お別れ」するのは困難としているが、取引関係の縮小は痛手となろう。このうえ、頼みのスマホ事業が本格的に下降線をたどるようになったら、ビジネスの行方に黄信号がともるかもしれない。