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火力や原発の「蒸気タービン」トラブル続き 製造元日立の信用力も揺らぐ

   日立製作所が製造した火力発電所や原子力発電所の低圧蒸気タービンが相次いでトラブルに見舞われている。

   2013年4月に、中部電力上越火力発電所1号機の蒸気タービンのブレード(羽根)が1枚折れたトラブルは設置工事を終えて5月に運転を再開しているが、立て続けのトラブルに信頼力も揺らぎつつあるようだ。

タービンの羽根「折れるようなものではない」

日立製の蒸気タービンで損傷が相次いでいる(写真は、日立製作所「エネルギー 火力発電」のホームページから)
日立製の蒸気タービンで損傷が相次いでいる(写真は、日立製作所「エネルギー 火力発電」のホームページから)

   低圧蒸気タービンは、火力や原子力発電所に使われている。ボイラーから発生した蒸気を受けとめて羽根で送り込み、発電機を回して電力を生み出す、いわば発電所の心臓といえる部分。蒸気などを受けるため、巨大な回転体に取り付けた無数の羽根は1枚1枚、金属を削り出してつくる。

   羽根は取り付ける角度を一定にしないと高速回転したときに不具合が起きかねない。そのため、蒸気タービンは作業員が手作業で慎重に調整する熟練の技が必要、とされる。

   発電所では、蒸気タービンの羽根が折れたり損傷したりすると、一定の設定でアラームが鳴る仕組みになっている。ただ、ある電力関係者は「羽根が老朽化するなどでひび割れることはあるが、折れることはないと考えている」と話す。

   ところが、中部電力の上越火力発電所1号機は2012年7月に稼働して、そのわずか2か月後に1枚の羽根が折れ、その半年後の13年4月に2度目のトラブルを起こした。そのときも、羽根が1枚折れた。

   しかも、この火力発電所は液化天然ガス(LNG)による最新鋭の発電システムのはずだったのだ。

   日立製の蒸気タービンの不具合はそれだけでない。最近の1年に起こった蒸気タービンのトラブルは、中部電力・上越火力発電所1号機のほか、2012年11月の中部電力・浜岡原子力発電所3号機、12月の同4号機、13年3月には中国電力・島根原子力発電所2号機、この5月には北陸電力・志賀原子力発電所1号機と、4か所で6件見つかっている。

   原子力発電所は現在稼働を停止しているので、蒸気タービンの不具合が直ちに発電事業に影響することはないが、これが稼働中であれば、発電機が止まる事態になっていたかもしれない。

   J-CASTニュースが事実確認すると、同社は「電力会社に納入しているものなので、こちらからは(不具合の)件数は開示できない」としている。

「損傷原因は現在、究明中」

   直近でトラブルが起きた中部電力・上越火力発電所は、「応急処置」を施して2013年5月30日に運転再開。折れた蒸気タービンの羽根を取りはずし、「圧力プレート」を設置して運転することにした。ただ、電力需給がひっ迫する夏本番を前に、本来の出力は出せないでいる。

   中部電力によると、トラブルの原因は「現在も検証中」という。「はずした動翼(羽根)を(日立に)持ち込んで調査している」と話す。

   原因については、日立も「現在、究明中で、推測を含めお話しかねます」と繰り返した。

   日立は2006年にも、中部電力・浜岡原発5号機、北陸電力・志賀原発2号機と立て続けにタービン損傷を発生。それに伴い中部電力と北陸電力から損害賠償請求訴訟を起こされている。

   中部電力とは、11年10月に和解が成立。日立が90億円を支払った。また、12年2月には北陸電力と和解が成立。日立が60億円を支払っている。