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物価は上昇したけれど問題は中身 景気回復の効果より円安の悪影響

   2013年6月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きが激しい生鮮食品を除くベースで100.0と前月比で横ばい、前年同月比で0.4%上昇した。5月に12年10月以来7か月ぶりにマイナス圏を抜け、さらに上昇。前年比プラスは1年2か月ぶりだ。

   ただ、景気回復に伴う物価上昇と言うよりは、原発の停止で火力発電の燃料費がかさむ電気代など、円安による輸入物価の上昇の影響が大きい状況はそのまま。今後も物価は上昇する見込みだが、賃金上昇が伴わないままだと「何のためのアベノミクスか」との不満が広がりそうだ。

ガソリン代に電気代 先行きも上昇の可能性

   総務省が2013年7月26日に公表した6月の全国消費者物価指数によると、前年同月比の上昇幅(0.4%)は2008年11月の1.0%上昇以来の大きさだ。ガソリンや電気代、灯油などのエネルギーによる総合指数の上昇幅は0.27ポイント拡大。逆に、生鮮食品を除く食料による総合指数の上昇幅は0.02ポイントとわずかだった。

   生鮮食品を除く食料では、シーチキンなど魚貝缶詰やかつおぶしの値上がりの影響もある。

   国内では2013年春以降、食料品などの値上げ表明が相次ぎ、7月には実際の値上げも相次ぐ状況にある。多くの食品の原料となる小麦粉(家庭用)は2~7%の値上げとなり、小麦粉を使う食パンや菓子パンも同程度に値上げされる。

   パン大手の山崎製パンが2年ぶりの値上げ対象としたのは、主力商品の「芳醇(ほうじゅん)」「超芳醇」といった食パンで、上げ幅は3~6%。「高級つぶあん」のような菓子パンの価格も同程度に引き上げる。

   このほか、食用油、マヨネーズ、ハムやソーセージといった調理に欠かせない品目も7月から軒並み数%~10%程度の値上げとなった。

   燃料調達費などを反映して毎月改定される電気料金も値上げが続いている。東京電力、関西電力など全国の10電力は8月まで5か月続けての値上げとなり、標準世帯の月額も過去最高を更新し続けている。電力同様に燃料が必要なガス大手4社も値上げが続いている。

   先行きもなお、為替やエネルギー価格に左右される見通しで、7月もガソリン価格の上昇で、プラス幅が拡大する可能性がありそうだ。

サラリーマンのお小遣いはワースト更新

   ここで注目すべきは、6月の全国消費者物価指数(CPI)が、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数でみると、前年同月に比べて0.2%下落したこと。下落幅は前月より0.2ポイント縮小したとはいえ、なおマイナス圏にあるのも確かで、食料とエネルギーがCPIを引き上げる「主役」であることを示している。

   同時に発表された全国の先行指標となる7月の東京都区部のCPI(生鮮食品を除く)は、前年同月比で0.3%上昇した。3か月連続のプラスで、上昇幅は6月(0.2%上昇)から拡大した。けん引役は、ガソリン代と電気代だ。

   総合指数は0.4%上昇、食料及びエネルギーを除く総合指数は0.4%低下した。物価は上昇基調にあるが、こちらも食料とエネルギーを除いてはマイナス圏にある。

   一方、賃上げのほうは足取りが重い。大手企業が集結する日本経済団体連合会の2013年夏の賞与の妥結状況の一次集計(64社)によると、平均の前年比は7.37%伸びて84万6376円。臨時収入が増えれば、「少しぜいたくしてみようか」という気分が起きるかもしれないが、この集計には電機など、経営状況の「厳しい」ところが含まれておらず、全体の趨勢を示しているかは疑問符もつく。

   新生銀行の調査によると、2013年のサラリーマン(20~50歳代男性)の「月額お小遣い」はバブル崩壊後のワースト記録を更新し、3万8457円。昼食代は518円で、弁当持参派は3割強だったという。吉野家の牛丼(並盛280円)が支持されるのも頷ける結果だ。株高で余裕のできた富裕層とは異なる、資産を持たない層のすそ野の広さをうかがわせる。

   エコノミストの一部には、「賃金上昇で購買力が底上げしないなかでは、物価上昇は持続性を伴わないことが多い」との指摘もある。