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アマゾンの「10%ポイント還元」に異議 日本出版者協議会「要望書」を突き付ける

   オンライン小売り大手「アマゾン」が学生向けに実施している、書籍購入時の10%ポイント還元サービスに、日本出版者協議会(出版協)が反発した。

   ポイントは「値引き」であり、いわゆる書籍の再販制度を脅かすという。出版社に向けて、アマゾンに「反対の声」を挙げるよう呼びかけた。

1年前にも申し入れたが「回答する立場にない」

「STOP!! Amazon!!」。

   出版協は2013年8月9日、公式サイト上でこのような表現で訴えた。アマゾンの「Amazon Student」で実施されている書籍購入時の10%ポイント還元サービスに対して、会員出版社51社が、刊行する商品をサービスから除外するよう求める要望書を送付したと発表。対象となる書籍は、アマゾンの流通書籍の約6%に相当するという。

   「Amazon Student」は学生限定で、最初の半年間無料で利用でき、継続する場合は1900円の年会費を支払う。各種特典のひとつに「10%ポイント還元」があり、コミックや雑誌、電子書籍を除く本をアマゾンで注文すると、価格の10%がポイントとして付与される。キャンペーンを実施しているとさらにポイントが加算される場合があり、現在も「最大20%還元」をうたう書籍があった。

   出版協は2012年10月17日にも、ポイント還元をやめるようアマゾンに申し入れている。明らかな値引きにあたり、景品表示法の景品にも該当しないと主張すると、アマゾン側は公正取引委員会に話をしていると説明し、商品購入時にポイントを利用する以外に景品を選択することも可能にしたと釈明したという。だが出版協は、実際は「選択」になっていないと指摘。アマゾンはこの点「公取委とは詰めていない」と話したということだ。別途アマゾンから文書回答が寄せられたものの、ポイント還元に関する具体的な説明はなく、「申入書記載の事項に関して、弊サイトとしては個別の契約内容に関して貴会に対しご回答する立場にはないと考えております」と返答したのみだった。その後も変更される様子がなかったため、今回の動きにつながった。

   目的は、再販制度を守るためだ。「著作物の普及という文化的、公共的、教育的役割を実現していくのに適しているとされ…全国どこでも同じ値段で知識や文化を伝播することが可能」だと、そのメリットを強調。例外的に大学生協は再販制度の適用外だが、アマゾンのように業界の慣習を破って「値引き」を続ければ制度が崩壊し、「街の書店はますます苦境に陥る」と訴える。

「公正競争規約」が根拠となって「2%還元」が業界の目安に

   書籍購入時にポイントを付与するのは、何もアマゾンに限ったわけではない。大手書店やアマゾン以外のオンライン書店でも、類似のケースはある。ただ、10%も還元するのはアマゾンぐらいしか見当たらないのも事実だ。例えば丸善やジュンク堂、文教堂が参加する「hontoポイント」の場合、付与されるのは100円につき1ポイントとなっている。

   公正取引委員会は2006年5月24日、出版物小売業公正取引協議会から申請のあった「出版物小売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」を認定した。ここでは景品類の提供の実施機関に関する制限が変更され、「年2回・90日以内」とされるものの「例外」のひとつをこう定めている。

「購入金額、購入冊数等の購入実績を一定の換算方法に基づいて継続的に記録し,蓄積された購入実績に応じて懸賞によらないで提供する景品類であって、取引価額の100分の2の範囲のもの」

   つまり定価の2%以内なら制限なし、というわけだ。ただし初年度は1%となっている。2007年8月20日付の日経MJは「ポイント還元制度は景品とは直接関係はない」が、規約が根拠となって「『2%還元』が業界の目安になろうとしている」と伝えている。さらに公取委が「いわゆるポイントカードは消費者のささやかな楽しみでもあり、各社で判断してもらいたい」と容認しているような姿勢を報じた。これが、ポイント還元サービスに弾みをつけたとも考えられよう。

   しかしアマゾンの10%という数字は、2%を大きく上回る。規約は、2%を超える場合でも「年2回・90日以内」であれば認められると読み取れるが、「Amazon Student」は年会費を徴収しており、期間限定ではなさそうだ。

   出版協は出版各社向けに、アマゾンへ送付する「要望書」のひな型を作成してサイト上に掲載。アマゾンに出版物のポイントサービスから除外するよう主張する内容だ。また要望に対しては、文書で8月20日までの回答を求めている。この働きかけに呼応する出版社が何社現れるかは不明だが、回答の期日にアマゾンがどんなアクションを起こすか注目だ。

   ただ消費者は、必ずしも再販制度に理解を示しているとは限らない。インターネット上には、「何十年も前の制度におんぶにだっこ」している出版業界の姿勢への批判や、再販制度が日本の出版文化をだめにするとの書き込みも見られた。逆にアマゾンの巨大化を懸念する声や、アマゾンで販売されなくなったら出版社自身が困るのではないかという意見もあった。