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財務省、国債の「安全性」説明をなぜか修正 消費税にらんで「財政健全化」訴えたい?

   財務省がホームページにある国債に対する「よくある質問」を修正していた。国債の「安全性」について、これまでは「安心してください」と説明していたが、国債の価格が下落すれば、「家計や企業にも影響を与える」ことをはっきり述べている。

   一方、国債の価格は2013年4月の日本銀行による「異次元の金融緩和」の実施以降、一時急落(長期金利は急上昇)。8月2日には再び0.8%を超えたが、16日以降は0.75%台と乱高下している。

「間違いなく、元本と利子はお支払いいたします」

財務省は、「国債は満期まで保有すれば、元本割れはありません」という。(写真は、財務省「個人向け国債」のホームページ)
財務省は、「国債は満期まで保有すれば、元本割れはありません」という。(写真は、財務省「個人向け国債」のホームページ)

   説明が差し替えられていたのは、「よくある質問」の「国債の購入と管理」の項目にある「日本が財政危機に陥った場合、国債はどうなりますか」の質問項目。これまでは、「日本が財政破綻した場合、国債はどうなりますか」の問いに、「国債は政府が責任をもって償還いたしますので、ご安心ください」と答えていた。

   ところが、その質問が「日本が財政危機に陥った場合、国債はどうなりますか」に変わり、答えも、

「仮に財政危機に陥り、国が信認を失えば、金利の大幅な上昇に伴い国債価額が下落し、家計や企業にも影響を与えるとともに、国の円滑な資金調達が困難になり、政府による様々な支払いに支障が生じるおそれがあります。
   そうした事態を招かないよう、財政規律を維持し、財政健全化に努めていく必要があります」

に書き換えられていた。

   これについて、財務省は「じつはホームページの書き換えは2012年12月12日に行ったものです。なにか状況が変わったわけではなく、内容について、より正しく、はっきり、わかりやすく変更しただけです」(国債企画課)と、変更の趣旨を話している。

   国債には「個人向け国債」と「新窓販国債」があり、購入金額や購入単位、償還期限などの商品性が一部異なるが、いずれも満期日まで保有していれば元本割れすることはない。 ただし、いつでも市場で売買できる「新窓販国債」の場合は、売却するタイミングによっては利益が出たり損したりする。修正した説明では、金利の大幅な上昇によって国債の価格が下落すれば、含み損を抱えたり、売却によって元本割れしたりする恐れがある、ことを指摘したわけだ。

   とはいえ、財務省は「国債は満期まで保有してもらえれば、元本割れはしません。間違いなく、元本と利子はお支払いいたします」(国債業務課)と、強調する。

消費増税のための「地ならしか」と話題に

   財務省によると、6月末時点の国の借金の残高は1008兆6281億円で、このうち国債の残高は830兆4527億円にのぼることがわかった。

   借入金が54兆8071億円、一時的な資金不足を補うための政府短期証券は123兆3683億円。一国の公的債務の大きさを国際比較する際には、国と地方の分を合算した指標を使うが、国の借金分だけで1000兆円を突破した。

   その債務残高の国際比較(GDP対比)で日本は、米国の113.0%を上回る224.3%(2013年)と世界一だ。

   財政健全化を推し進めるには、増税などの財源の拡充と歳出抑制が必要。しかし、そうした中でも消費税率の引き上げをめぐっては、なお反対の声がくすぶっている。

   どうやら、それもあって国債のホームページの修正が「財務省による消費増税のための地ならしの一環ではないか」との見方が広がったようだ。