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銀行の住宅ローン、9月は値下げ競争に 3メガバンクでも差が開いた

   大手銀行などによる住宅ローンの獲得競争が熱を帯びている。2013年9月に適用する住宅ローン金利は大手銀行が8月に比べて軒並み引き下げた。来年4月に予定される消費増税前の駆け込み需要をにらんだものでもある。金利の引き下げ余地も限られるなか、金利以外のサービスを差別化しようとする動きも目立つ。

三井住友信託銀行は年1.25%に

   住宅ローン金利は長期金利(10年物国債の利回り)を指標とし、通常はこれに連動して決められる。4月に日銀が「異次元緩和」を導入後、国債市場が動揺し、長期金利が上昇したため5、6、7月と各行は住宅ローン金利を引き上げた。しかし、今夏以降は長期金利が低下傾向にあるうえ、来年4月の消費増税を見越した駆け込み需要を取り込むため、各行は引き下げに転じている。8月中旬に異例の「月中引き下げ」(通常は前月に決めて月初から適用)を実施したみずほ銀行は、主力の10年固定型の最優遇(信用度の高い人向け)金利を年1.55%と9月は据え置いたが、他は9月に引き下げた。

   9月の引き下げ幅が大きいのは三菱東京UFJ銀行。主力の10年固定型の最優遇金利は8月の年1.70%から年1.50%に下げた。水準が低いのは三井住友信託銀行で、8月の年1.35%から年1.25%に下がり、大手5行では最低。三井住友銀行は8月から0.05%引き下げて9月は年1.60%。りそな銀行は0.15%引き下げて9月は年1.55%とした。3メガバンクだけとっても1.50%~1.60%までバラバラとなり、引き下げ競争の激しさを物語っている。

金利以外のサービスをアピールする戦略も

   金利競争の背景には、住宅ローンが国内で融資需要を見込める数少ない有力な分野と言えることがある。バブル崩壊からリーマン・ショックを経た過去20年超の間に、国内の有力企業は借金を減らす一方で、内部留保をためこみ、財務体質を改善してきた。中小企業も縮む国内市場で新たな投資に踏み込みにくく、融資需要が乏しい。このため、融資拡大に住宅ローンは欠かせない存在で、地銀も事情は同じだ。最近では大手行、地銀に加えてネット専業銀行も住宅ローンに注力し、顧客獲得競争が激しくなっている。

   ただ、金利は各行とも過去最低に近い水準に来ており、さらなる引き下げ余地に乏しいのも実情だ。このため、金利以外のサービスをアピールする戦略も目立つ。

   みずほ銀行が8月に導入したのは柔軟な返済方法。出産による育児休暇取得時期や子供の進学などでまとまった学費が必要になった時期に、返済額を減らすことができる。逆に、子供が自立するなどして余裕ができた時期には、返済額を増やせるようにする仕組み。毎月またはボーナスの支払い額が硬直的だと家計の圧迫感が大きくなる時期があることに配慮した。

   一方、りそな銀行は女性向け住宅ローンを6月にリニューアル。「頭金が2割必要」との融資条件を取り払い、ホテルなどでの割引サービスを付け加えた。従来からある、特定の病気にかかった際に借金が減額される疾病保障なども各行が改めてアピールするなど、金利外競争もヒートアップしている。