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佐川急便「アマゾン切り」の理由 「採算がとれないと判断」?

   宅配便大手の佐川急便(SGホールディングス)が、インターネット通信販売のアマゾンとの取引をやめた。

   これまでアマゾンを利用すると、多くのケースで佐川急便かヤマトホールディングスから荷物が届いたが、同社が取引を打ち切ったため、ヤマトが事実上の独占状態になっているようだ。

配達個数増えても、収益増えない事業構造

佐川急便は収益改善に取り組んでいる(画像は、「SGホールディングス」のホームページ)
佐川急便は収益改善に取り組んでいる(画像は、「SGホールディングス」のホームページ)

   宅配便業界にとって、アマゾンなどのネット通販はいまや一番の「お得意先」。経済産業省によると、国内のBtoC Eコマース市場規模は、2012年は全体で9.1兆円規模に達した。宅配便市場も、この10年間で28億個から34億個へと2割超も拡大。それをけん引しているのがネット通販だ。ただ、配送単価は下落している。

   こうした状況に、佐川急便は収益改善を進めており、その一環がアマゾンとの取引打ち切りとされる。同社は「個別の取引のことはお話しできません」としているが、取引停止について、否定も肯定もしていない。

   取引停止の理由には、「適正な利潤が稼げなくなったから」、「春先から、佐川急便がアマゾンに値上げを交渉したが破談になった」との情報がある。

   アマゾンは当日配達の地域拡大や送料の無料化など、配送サービスの拡充を強力に進めることで多くのユーザーを獲得してきた。一方で、こうしたサービスの負担を、佐川急便などの配送業者が負ってきたのもまた事実のようだ。

   週刊東洋経済(2013年9月28日号)によると、佐川急便がネをあげたのは事業インフラが要因と指摘する。佐川急便は配送の一部を外部委託していて、配達個数が増加すると委託業者に支払う傭車費も増加するため、「アマゾンが求める値引き以上に傭車費が下がらないと、不採算取引になる」という。

   そのため、ネット通販大手のアマゾンといえども、このまま取引を継続していては採算がとれないと判断したようだ。

配送は「自前」の時代になる?

   しかし、佐川急便が手を引いたからといって、ヤマトホールディングスが「安泰」というわけではないようだ。

   その理由の一つは、単純に仕事量が増えること。ネット通販の利用は右肩上がり。なかでもアマゾンの利用は急増している。加えて、佐川急便の分まで引き受けて荷物が増え続けるとなると、多くの正社員で作業を賄うヤマトの負担はかなり膨らむ。

   「個人向けの配達が多い郊外では、アマゾンの配送や荷動きのチェックなどの作業が増えて、仕事に追われる」との声もある。

   もう一つは、ネット通販では産地から直接出荷・販売している業者やメーカーの通販を囲い込む動き、また、たとえばセブンミールやカクヤスなどのように自前配送を実現しているところが増えていることだ。

   さらに、アマゾンや楽天も自ら物流に参入する動きがあるとの見方がある。首都圏のほか、地方などにも物流拠点を建設。自らが配送業者として、あるいは配送を委託するにも、全国にネットワークを有するヤマトよりも安い単価で運んでくれる地場の中小配送業者に委託してコストダウンを図るというのだ。