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優先席付近の携帯電源オフ、必要ない? 心臓ペースメーカーへの影響巡って論議に

   心臓ペースメーカーへの影響が少なくなったとして、鉄道事業者が携帯電話の電源オフ呼びかけを再検討する動きが出てきたと報じられ、ネット上で、オフが本当に必要なのかと論議になっている。

   現在もほとんどの電車の優先席には、携帯電源オフを呼びかけるシールが貼ってある。しかし、毎日新聞が2013年9月28日に報じたところでは、関西で京阪電鉄が電源オフを呼びかける車内放送をラッシュ時だけに変更し、近鉄が改訂すべきか検討を始めた。

国の指針緩和で、鉄道事業者に再検討の動き

電源オフは必要あるのか
電源オフは必要あるのか

   その背景には、国の指針緩和があるとした。総務省ではこれまで、実験で携帯から15センチで影響が出たことから、これまで携帯をペースメーカーから22センチ以上余裕を見て離すことを指針にしてきた。それが、電波の強い第2世代の携帯が12年中に使用停止になり、再度の実験で3センチほどで影響が出たことから、13年1月に15センチ以上に指針を見直した。

   毎日は専門家のコメントも紹介しており、胸ポケットに携帯を入れて抱き合うようなことがない限り、影響はほとんどないという。むしろ、その影響を訴え過ぎれば、ペースメーカー利用者が不安で電車に乗れなくなってしまうと指摘している。

   ところが、利用者の間では影響を心配する声は根強く、記事によると、日本心臓ペースメーカー友の会では、「電源オフは継続してほしい」とコメントした。それも、「(携帯による)影響はない」と会員に周知してはいるものの、不安を拭い切れないからだというのだ。

   これに対し、ネット上では、影響がないのに電源オフにしてほしいという要望に異論が続出している。

「本当に意味がわかんないよ」「これは電車会社が悪いよな 根拠もないのに電源切れってなんだよ」「むしろ電車のアナウンスで『なお、現在使用されているペースメーカーには影響ありません』とか案内してもらえばいいじゃないか」

   こうした異論について、利用者はどう考えるのか。

ペースメーカー利用者「それでも続けて」

   ある心臓ペースメーカー利用者は、J-CASTニュースの取材に対し、それでも携帯電源オフは続けてほしいと明かす。

「総務省の指針では、まったく影響がないとは言っていません。ですから、オフにしなくてもいいとはならないと思います。自律神経の問題もありますので、心臓がドキドキして気が遠くなったり気持ち悪くなったりする人もいるはずですよ。利用者に矛先を向けるのは、違うのではないでしょうか」

   電磁波過敏症の人もかなりいるとして、優先席のような避難場所がないと安心できないと言う。

「優先席は狭く限られているのに、そこでも携帯が必要なんでしょうか。携帯を切ったら困るというのは大げさでは。優先席ぐらいは携帯の電源を切る、という社会的コンセンサスがあってもいいと思います」

   鉄道事業者の一部で車内放送変更などの動きがあることについては、「われわれで判断できることではありませんが、優先席ではいつでも電源を切っていてほしいと希望します」と言っている。

   ただ、利用者は、神経質になっているばかりではなく、自らも携帯を使う人は多いとした。自分の胸と反対側の右手を使えば、ペースメーカーと15センチ以上は離れるので問題がないからだという。

事故なくも、事業者は運用変更に及び腰

   優先席付近の携帯電話オフの必要性について、総務省の電波環境課では、こう言う。

「われわれの立場としては、指針に沿って運用してほしいとしか言えません。強制力のある規制ではなく技術的な情報共有ですので、電車内での運用は、通話マナーなども含めて、鉄道事業者が考えるべきだということです。指針については、すでに事業者に説明しており、各社が定期的に話し合って検討していると聞いています」

   携帯による影響については、世界でも事故が起きたという報告は聞いたことがないとした。

「影響と言っても、ペーシングの頻度がちょっとずれたという一時的な誤作動です。気分が悪くなったり、立ちくらみがあったりするかもしれませんが、携帯を離せばペーシングは元に戻ります。ペースメーカーの機械が壊れるというのは、考えられないことです」

   とはいえ、鉄道事業者は、電車内での運用の変更には躊躇している様子だ。

   前出の京阪電鉄では、総務省の指針緩和で車内放送を変更したことを広報担当者が認めたものの、「ラッシュ時以外は電源オフでなくてもいいということではないです。そのように変更するという動きも聞いていません」と説明した。また、JR東日本の広報部では、「影響がないと証明されたかよく分からない状況ですので、特に今までの取り組みは変えていません。すぐに電車内での運用を変えるということもないです」と取材に答えている。