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復讐を口にしたストーカーから逃れる手段 自宅へ近づかない、1人で歩かないのは鉄則

   東京都三鷹市で殺害された高校3年生の鈴木沙彩さん(18)が、事件当日にストーカー被害を警察に相談していたことが明らかになった。

   警察は容疑者に「警告」を試みたが、留守番メッセージを残すにとどまり、事件を防ぐことはできなかった。

友人らに鈴木さん復讐の脅迫メールも

   事件は2013年10月8日の夕方、三鷹の閑静な住宅地で起きた。鈴木さんは自宅前の路上で首などから血を流して倒れており、約2時間後に病院で死亡した。警視庁は同日夜、日本国籍の池永チャールストーマス容疑者(21)を殺人未遂容疑で緊急逮捕した。犯行を認めた池永容疑者は「フェイスブックで知り合った」「交際を巡り恨んでいた」など鈴木さんとの関係を次第に明らかにしている。

   インターネット上では交際当時のものと思われる2ショット写真が複数見つかっており、いずれの写真でも2人はほほ笑みながら仲睦まじげに写っている。しかしその後、かつての恋人は恐ろしいストーカーと化してしまった。

   在学高校や警視庁の発表から、事件前のことも徐々に分かってきている。事件が起きる4日前、鈴木さんは担任教諭に「自宅周辺で知り合いの男が待ち伏せしている」と被害を相談し、教諭は杉並署に連絡した。池永容疑者が鈴木さんの友人に「(鈴木さんに)復讐してやる」と脅迫じみたメールまで送っていたとの報道もあり、鈴木さんは「ブロック(受信拒否)して」と頼んだという。8日朝には両親とともに三鷹署を訪れた。

   三鷹署はその場で池永容疑者の携帯電話に電話し、警告を試みたが3回ともつながらず、留守番電話に「折り返し電話をください」とメッセージを吹き込んだ。その日のうちに、鈴木さんは待ち伏せしていた池永容疑者に自宅敷地内で襲われ、命を落とした。

「かなり危険な状態。容疑者の身柄確保が適切だった」

   警視庁生活安全総務課の山口寛峰課長は、記者団の取材に「警察の対応が十分だったかは、事実確認をしていく」などと説明している。ストーカー事件防止の鍵となる「ストーカー規制法」では、まず相手への「警告」から始め、禁止命令、懲役または罰金と段階的な対応を踏む(刑事告訴事案を除く)。警視庁によると「警告実施後、約90%の者がその後の行為をやめている」というが、長崎県西海市や神奈川県逗子市の例もあるように、同法施行後も悲惨なストーカー殺人が起きている。

   鈴木さん殺害事件を取り上げた9日放送の「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS系)では弁護士の野村修也氏が「警察はもっとできたのではないかと思われがちだが、警察もつきまといだけではなかなか手を出しにくい」と、警察対応の実情を話した。さらに、警察が介入することで逆上して「かえって動機を与えてしまう危険性もある」とも話す。池永容疑者は「事件の数日前に凶器のナイフを買った」と供述していることから、留守番電話が殺害に直接つながったわけではなさそうだが、何らかの刺激を与えてしまった可能性が否定できない。

   ストーカー被害などの相談を受けている「NPOヒューマニティ」理事長の小早川明子氏は取材に対し、一般的には弁護士や加害者に影響力のある人など、第3者に入ってもらうことが有効としながらも、今回のケースについては「その段階ではありません」と語気を強める。「復縁や責任の要求ではなく、復讐を口にしているのはかなり危険な状態。容疑者の身柄確保が適切だった」として、ストーカー被害の内実を見抜けなかった警察を問題視する。「警察に相談すること自体は必要ですが、逆上の恐れもある。今回のように自宅が相手にわかっている場合は、自宅へ近づかないこと、1人で歩かないことは鉄則です。まずは、物理的な距離をとって安全を確保しなければ」と話した。