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東京五輪で「カジノ解禁」勢いづく 「悪いイメージ」払拭できるか

   カジノ解禁に向けた動きが活発化している。政府が2013年6月の観光立国推進閣僚会議で策定した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」の中でカジノ実現を目指す考えを打ち出したのに続き、9月に2020年東京五輪誘致が決まったことから、外国からの訪日客誘致の同じ脈絡でカジノ解禁論が勢いづいている。

   安倍晋三首相も従来から解禁に熱心で、国会の超党派議連が今月招集予定の臨時国会に解禁法案を提出する準備を進めている。

超党派の国会議員150人が法案準備

   法案を準備しているのは超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(会長=細田博之自民党幹事長代行)で、提出を目指しているのが「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」。許可を受けた民間事業者が国の認定を受けた地域で、カジノ単独の施設でなく、宿泊施設と一体となった「特定複合観光施設」を設置・運営できるという内容だ。

   この施設が、一般的に「統合型リゾート(IR)」といわれることから、議連は「カジノ議連」「IR議連」と呼ばれ、自民、民主、公明、維新、みんななどの国会議員約150人が参加。安倍首相、麻生太郎副総理兼財務相は最高顧問に就任している。

   カジノ解禁は「頓挫の歴史」を重ねてきた。自民党の有志議員が2004年に基本構想を作り、2006年には党観光特別委員会が基本方針を決定。民主党政権下でも国土交通省の成長戦略会議が2010年に提案し、議連会長私案として法案もまとめた。それでも、悪いイメージを払拭できずにきた。

   風向きが変わったのが安倍政権になってから。観光立国を目指すとして閣僚会議が6月策定した「アクション・プログラム」で、「IR」の1項目を立て、「前提となる犯罪防止・治安維持、青少年の健全育成、依存症防止などの観点から問題を生じさせないために必要な制度上の措置の検討を関係府省庁において進める」と書いた。マイナス面を並べ立てているようだが、必要な措置を取れば解禁するという意味に他ならない。政府のこうした正式な意思表示は初めてだ。

   そして、東京五輪決定。2020年に向け訪日客の宿泊施設を確保する必要があり、ホテルや娯楽施設の整備の流れにカジノも“便乗”しようという思惑が膨らんでいる。

世論はまだ余り盛り上がらず

   9月中旬には東京に世界の娯楽産業幹部が集まった会合が開かれ、米カジノ大手や娯楽業界に特化した投資銀行等からの参加者が、「日本でカジノが解禁されれば、1万人超の雇用創出など経済効果をもたらす」「日本ではゲーム関連収入が1.5兆円(150億ドル)以上見込め、マカオに次ぐ世界2位のカジノ市場になる」などの予想を披露、関係者を興奮させた。

   実際、シンガポールでは海外観光客の落ち込みから新たな観光の目玉として2010年にカジノ2施設を開業、2年で観光収入が7割以上増えたといい、ゴールドマン・サックスの試算では、カジノ解禁に伴う日本での経済波及効果は1.1兆円にのぼるという。

   だが、解禁法案が臨時国会に出されても、臨時国会はアベノミクス関連の法案のほか、発送電分離など積み残された重要法案も多く、議連の目標も来年の通常国会での成立と思われる。また、策定中の法案はカジノ解禁のための基本法で、2~3年かけて詳細なルールを定めた実施法を成立させ、さらにその後の業者選定(入札)や施設建設などを考えると、カジノ開設は早くて5、6年先になるとみられる。

   マスコミでも、この問題を取り上げるのは「SPA!」「FLASH」など主にエンタメ系に熱心な週刊誌やネットニュース中心。ロイター、ブルームバーグといった外国通信社も、欧米資本のこの問題への関心の高さを反映してか報じているのが目立つが、一般紙では地方での誘致の動きなどローカル記事を別にすると、9月以降では「読売」が9月24日朝刊で、議連の細田会長への取材を中心に「法案提出検討」と報じた程度。一部の期待とは裏腹に、世間の盛り上がりは、まだまだのようだ。