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サッカーW杯「地獄のロード」が心配 「暑さ」はむしろ日本に味方する?

   2014年のサッカーワールドカップ(W杯)ブラジル大会の対戦カード決定日が迫ってきた。日本代表にとっては、強豪国が同じグループに入る「死の組」に加えて、長距離移動や気候が負担となる「地獄のロード」も懸念される。

   ただ選手にとって、高温多湿な気候は日本の夏で経験済みだろう。厳しい環境だが、冷涼な欧州の代表国よりも日本に有利にはたらくかもしれない。

1年中「日本の夏」のようなマナウスは「最悪」

ブラジル12都市で開催される(FIFAウェブサイトより)
ブラジル12都市で開催される(FIFAウェブサイトより)

   W杯グループリーグの試合が組まれるブラジル国内の会場は、サンパウロやリオデジャネイロをはじめ12都市。国土が広いため、抽選で振り分けられたグループによっては南北の長距離移動を強いられる恐れもある。

   スポーツ新聞各紙は、移動や試合会場の条件の悪さから「最悪グループ」を論じている。2013年12月6日付のスポーツニッポンが選んだのはグループAの第2スポットだ。初戦はサンパウロだが2戦目をアマゾン川流域のマナウス、3戦目は北部レシフェで戦う。サンパウロからマナウスまでは片道約2700キロ、飛行時間では4時間ほどで東京から上海の航路に匹敵する。

   マナウスは熱帯雨林が茂る高温多湿な気候だ。ブラジル在住経験がある日本人女性に取材すると、「1年中、日本の夏のよう」と話した。過密日程のなかで長距離を移動してきたうえに気温30度、湿度80%のグラウンドでプレーするのは酷だろう。かつてブラジルでプレーしていた元日本代表の三浦知良選手は「相当暑い。できれば、やらないほうがいい」と報道陣に語っている。

   初戦が行われるサンパウロは、1日の気温と湿度の差が激しいので有名だという。マナウス移動後に体調管理で苦労しそうだ。3戦目のレシフェは、2013年6月のコンフェデレーションズカップで日本がイタリアと戦った地。双方が壮絶な「打ち合い」を演じたのは記憶に新しいが、暑さと湿気が特にイタリアの選手にはこたえていたようだ。気温差、酷暑、湿気、1万キロ近くの移動に加えて開幕戦では開催国で優勝候補のブラジルと顔を合わせる。好条件は何ひとつ見当たらないスポットで、是が非でも避けたいだろう。

   日刊スポーツが選んだのはグループDの「3」だ。マナウス、サンパウロに続く第3戦はベロオリゾンテで試合が組まれる。先の日本人女性によると「内陸部で比較的乾燥している」という。多湿のマナウスの後に乾燥地では、対応が難しいだろう。

   グループDの「4」、グループGの「4」は順序こそ違うがいずれもマナウス、レシフェ、ナタルで試合が組まれている。12月6日付のサンケイスポーツによると、移動距離は合計1万4244キロと、最も移動が短いスポットの実に4倍超。しかもすべて「6月は暑い」といわれる地域に位置しており、「地獄の会場」とすら評されている。

北部でも場所によっては「日本の夏よりまし」

   ただ暑さという悪条件は日本より、地域によっては夏でも比較的冷涼な欧州の出場国を直撃する可能性が高い。「フットボールレフェリージャーナル」を運営するサッカージャーナリストの石井紘人氏は、2002年の日韓W杯を例に挙げる。気候だけが原因ではないだろうが、グループリーグで前回大会優勝のフランスをはじめ同3位のクロアチア、ポルトガルが姿を消した。前回は3連敗に沈んでいた日本がベルギーと引き分け、ロシアに勝ったのも、気候を熟知していたという「地の利」を生かせた点は否定できないだろう。

   試合会場の中で、6月は暑いとされる北部のレシフェやナタル、フォルタレザ、サルバドルについて前出の日本人女性は、「湿度の高さは、日本の夏と比べるとそれほどではないかもしれません」と話す。アマゾン流域のマナウスは「別格」の厳しい環境だが、これらの会場ならそこまで悲観的にならずに済むかもしれない。

   コンフェデ杯で日本がイタリアに善戦したのも、会場のレシフェの暑さでイタリアのパフォーマンスが落ちた影響を石井氏は指摘する。日本の選手は蒸し暑さに慣れているが、欧州の選手はそうとは限らず、「灼熱地獄」に苦しむ恐れがある。

   報道によると組み合わせ抽選会を前に、ブラジルやウルグアイ、イングランドといった強豪国が「日本とは対戦したくない」と漏らしているという。先の欧州遠征でオランダ、ベルギーと互角以上の戦いをした評価かもしれないが、蒸し暑さへの備えができているとして警戒感を強めているのだろうか。地球の裏側ブラジルで日本が「ホームグラウンド」のように戦うことができれば、代表史上最高の「W杯8強以上」が見えてきそうだ。