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生保逆ざや解消、経営が好転 でも、還元策に積極的でない社が多い理由

   生命保険各社が2013年11月に発表した13年9月中間決算で、契約者に約束した利回り(予定利率)を実際の運用成績が下回る「逆ざや」は、大手9社の単純合算ベースで解消した。2001年に公表が始まって以来、初めての「快挙」。

   穴埋めが必要な逆ざやはバブル崩壊以来、業界を悩ませてきたが、ようやく経営環境が改善したことを示した。ただ、国内市場の頭打ちや損保・外資系の台頭など、大手生保に立ちはだかる課題はなお多い。

大手9社で見ると、2000年代前半には逆ざや額年1兆円

   逆ざやとは何か。生保各社は契約者から集めた保険料を国債や株式、不動産などで運用し、保険金支払いに備える。生保各社は消費者と契約する際、「予定利率」と呼ばれる想定される運用利回り決めておく。予定利率を高くすれば、保険料を安くしたり、死亡時などの保険金を増やしたりすることができる。ただ、実際の運用は想定を下回ることもしばしば。下回った場合は約束した保険金を支払うために、生保が足りない分を穴埋めしなければならない。この穴埋め分が逆ざやだ。契約者には有利な状態だが、生保の経営には重荷となる。

   予定利率は現在、1%程度だが、バブル期には5~6%にまで高まった。1年更新の自動車保険などと違い、生保の商品には10年、20年に及ぶ契約期間の長いものが多い。このため、バブル崩壊で運用環境が悪化してもバブル期の高い予定利率による保険金支払いを迫られ、1990年代後半には逆ざやがもとで経営破綻する生保も相次いだ。大手9社の合算で見ると、2000年代前半には逆ざや額は年間1兆円を超えていた。これを穴埋めするのだから、経営を圧迫しないわけがない。

契約者への還元が今後の焦点

   とはいえ、バブル期に販売した予定利率の高い保険商品も、長寿社会で死亡保険はまだ残るが、契約時に保険料を一括払いし、一定期間後の保険金を受け取る「養老保険」のような貯蓄性保険は、時を追って次々に満期を迎える。バブル崩壊から20年も経てば、予定利率の高い契約者にとっては「お宝保険」も保険金が払われて消えていくため、逆ざや額も自然に減ってきた。足元の安倍政権の経済政策「アベノミクス」による円安も、外債配当の円ベースの額を膨らまし、逆ざや解消に貢献した。この結果、2013年9月中間決算で大手保険9社合計では、運用実績が予定利率を上回る「順ざや」に転じ、順ざや額は500億円近くに上った。

「(配当などの)契約者への還元も可能であれば前向きに考える」

   既に前年同期(2012年9月中間決算)に逆ざやを解消し、運用実績が予定利率を上回る「順ざや」だった明治安田生命保険の殿岡裕章副社長は、2013年9月中間決算発表の会見でこう述べ、順ざや定着に自信を示した。そうなれば、契約者への還元が今後の焦点となるのが道理だ。

   ただ、中間決算発表時の各社の反応を見る限り、日本生命や住友生命のように還元策には積極的ではない社が多い。円安など市場環境の好転で利益はあがっているが、若者の保険離れなどで保険料収入は減っており、経営の先行きに自信が持てないのだ。営業職員を多く抱えない損保・外資系生保の攻勢も激しく、大手生保のさらなる業績改善はハードルが高そうだ。