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高橋洋一の自民党ウォッチ
みんな渡辺・江田氏「決裂」の深層 集団的自衛権めぐる対立が表面化

   10月15日(2013年)に召集された臨時国会が12月8日、終了した。国会終盤は特定秘密保護法にばかり焦点があたったが、国会が終わり、政局が動き出した。みんなの党(渡辺喜美代表)に離党届を提出した江田憲司衆院議員は来週18日にも新党を旗揚げする。維新の会の東国原英夫氏は、離党し議員辞職して国会議席を維新に返還する。

   一方、江田新党のほとんどのメンバーは比例選出議員であるが、議員辞職はしない。政局での議員の対応は人それぞれだ。比例選出議員は、党に投票されるので、他党への移転はできないが、新党への移転はかまわないという現行法では抜け穴がある。

安倍首相にかけた「アビーロードの会」で筆者は見た

   政局では、内紛がいろいろと出てくる。おそらくマスコミは、渡辺氏の奥さんが「女帝」になっているなどとおもしろおかしく報道するだろう。そういった報道をする政治部系の記者は政策がわからないので、人間模様に着目して記事にする。筆者は、そうした見方は表面的だと思っている。さらに根っこにあるものへの掘り下げがないのだ。

   渡辺氏も江田氏も、結党前から筆者は知っているが、根は純粋な人で、政策指向の強い人だ。こうした人は政治家の中では希有な存在だ。政治的な路線対立というより、むしろ基本政策不一致がここに来て露見したとみている。

   きっかけになったのは、11月14日に渡辺氏が安倍首相と会食したことで、特定秘密保護法案で合意ありきだったと報道されている。

   その会食には筆者も同席していた。第一次安倍政権の時の政治家、安倍首相、菅官房長官(当時総務相)、塩崎氏(当時官房長官)、渡辺氏(当時行革相)がその後、定期的に行っている会合で、安倍さんの名前にひっかけて、アビーロードの会という。

   渡辺氏が、飯を食う前にと、「みんなの党は参院選のアジェンダに特定秘密保護法を入れているので修正協議したい」と紙を出した。これに対して安倍首相が、「では明日からそれぞれの担当者間で開始しよう」と答えて、すぐ終わりだ。

「自民党への擦り寄りが原因」は表面的な見方

   この一連のやりとりについて、みんなの党が選挙公約に入れている以上、修正協議を申し入れないと公約違反になるというくらいしか、筆者は考えていなかった。

   ただ、これがきっかけといわれると、ちょっと思い当たる節もある。これまでのみんなの党の政策では、経済成長、規制緩和、脱官僚、地域主権、行政改革などでは、渡辺氏と江田氏の間で意見のすりあわせがあり、玄人受けする政策が出されてきた。ところが、外交・防衛があまり書かれていない。特に集団的自衛権への態度は明らかになっていない。

   集団的自衛権の行使について、渡辺氏は積極的、江田氏は消極的だ。集団的自衛権は、日本版NSC(国家安全保障会議)設置法と特定秘密保護法と互いに密接に関係している。

   今回の内紛について、みんなの党が自民党に擦り寄ったことが原因とする報道があるが、これも表面的な見方だ。みんなの党の衆議院での行動を見ると、日本版NSC設置法と特定秘密保護法には賛成しているが、他の主要法案では反対で、しかも内閣不信任案には賛成している。

   政治に関する報道ぶりには、よく注意しなければいけない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。