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乙武さん「車いす入店拒否」騒動振り返る 「ほとんど心神喪失状態にあった」

   作家の乙武洋匡さんが2013年5月に「車いすだからと入店拒否された」として飲食店を名指しで批判した件について、「当時はほとんど心神喪失状態にあった」と12月18日に打ち明けた。

   乙武さんがツイッターで名指ししたことにより、店には無言電話が相次ぐなど営業妨害の嫌がらせも起きていた。その点については自身も把握していたようだが、当時はそうした精神状態から店名入りツイートを削除するという考えには至らなかったのだという。

「自分でも、冷静さを欠いた行為だった」と反省

フォロワーからの質問に返答する乙武さん(画像はツイッターをキャプチャ―したもの)
フォロワーからの質問に返答する乙武さん(画像はツイッターをキャプチャ―したもの)

   乙武さんは5月18日、東京・銀座のイタリア料理店を訪れた際に起きた出来事をツイッターで怒り交じりに報告した。お店が入っている雑居ビル2階にはエレベーターが止まらない。そのため、スタッフに下まで降りてきて抱えてほしいとお願いしたのだが、店主から「車いすなら事前に言っておくのが常識」「ほかのお客様の迷惑になる」「忙しいから無理」「うちのスタイルなんでね」などと言われて入店を拒否されたという。この「告発」が60万人以上のフォロワーに届いたことにより、店主のツイッターアカウントには苦情が多数寄せられ、ホームページで事情の説明に追われることとなった。

   その後のツイッター上での和解により、騒動は収束に向かうように思われたが、数日後に店主が説明の一部に反論したため再燃、乙武さんは4600字以上の長文で事細かに「真相」を語った。「軽率だった。自分でも、冷静さを欠いた行為だったと思う」として反省・謝罪の言葉を綴ったものの、店主の反論には「なぜそんなウソをつくのか」と応戦した。ネット上は再び賛否両論の嵐となり、乙武さんに対する非難の声もなかなか止まなかった。

   特に問題視されたのは、店名を晒したことだ。多くのフォロワーを抱える著名人が特定の店の問題を書き連ねてバッシングすれば、ファンをはじめとするネットユーザーたちの怒りの矛先が店へ集中することは容易に想像できる。実際、この店には無言電話も相次いだという。それでも敢えて店名を公開した理由について、乙武さんは「僕のように、こんな悲しい、人間としての尊厳を傷つけられるような車いすユーザーが一人でも減るように」と説明していた。また、数日後のブログでは「普段から応援してくださっているみなさんに泣きつきたかったのだ。愚痴りたかったのだ。そうでもしなければ、とてもやりきれなかったのだ」と本音を明かした上で、「あきらかに正常な判断能力を失っていた」と反省の弁を口にした。

「蒸し返し」に同情の声も

   店名入りのツイートは現在削除されているが、しばらくの間はネット上に残っていたことが確認されている。そのため一部ネットユーザーは、その点について騒動が収まった後も言及し続けていた。今回、半年以上経って口を開いたのも、「店名を晒し続けた理由はなんですか」とフォロワーから質問されたからだ。乙武さんは「当時はほとんど心神喪失状態にあって、削除するという選択肢が浮かばなかったというのが正直なところですかね」と回答した。「心神喪失」とは「精神障害などによって自分の行為の結果について判断する能力を全く欠いている状態」(デジタル大辞泉)のことを指すが、おそらく、店名を載せてしまうほど頭に血がのぼっていた状態を「心神喪失状態」と少し大げさに表現したのだろう。

   ネットではさっそく「『心神喪失状態』がこれほど長い期間続いていたのか」と、ツイート削除までに時間がかかったことに対する皮肉や、「心神喪失状態にあっても嫌がらせする気力は残ってるのか」「この件は乙武が悪いわ」といった批判の声が上がっている。だが騒動から半年以上経ち、未だに追及されることには同情するコメントも少なくない。「まだこの件の問題引っ張ってるのかよ」「未だにあんな下らない事件について突っかかってくる相手にも紳士的に対応してて偉いよな」「質問に答えたら言い訳って言われてかわいそう」などと気づかう声も出ている。