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難病医療費助成が見直し 自己負担増も求め、「広く薄く」

   難病患者の医療費助成制度が見直されることになった。医療費の助成対象を現行の56から約300疾患に広げる一方、難病患者に最大で月3万円の自己負担を求めることが柱だ。厚労省は2014年1月召集の通常国会に新たな法案を提出し、2015年1月からの導入を目指す。

   難病対策は「薬害スモン」の研究事業として1972年に始まった。この時に決まった難病対策要綱では、「原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残す恐れが少なくない疾病」「経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病」を難病と定義した。

年収に応じて月2500~3万円の負担を求める

   具体的な対策として、疾患により、(1)調査研究の推進(2)医療施設等の整備(3)地域における保健・医療福祉の充実・連携(4)福祉施策の推進(5)医療費の自己負担の軽減――などが行われてきた。

   このうち医療費助成制度は、医療費が高額な難病のうち、特定の病気の患者に対し、国と都道府県で医療費を支援する制度だ。

   今回の医療費助成制度の改革案は13年12月13日、厚労省の難病対策委員会で了承された。対象疾患の拡大の一方、これまで自己負担のなかった重症者にも所得に応じて負担を求め、対象の病気でも軽症者は助成対象から外すなど「広く薄く」支援する制度にするのが基本的な考え方だ。

   具体的には、助成対象を重症者と高額な医療費で軽症を維持している患者に限定。自己負担を3割から2割に引き下げ、年収に応じて月2500~3万円の負担を求める(生活保護受給者は従来通り無料)。極めて重症な患者は月1000円を負担上限とする。

   新制度が適用されてからも、すでに助成を受けていた人には、経過措置として3年間、上限を最大月2万円にする。これにより、対象患者は現行の約78万人から約150万人に増える見通しだ。また、子供の難病の助成制度は、医療助成対象を現行の514から約600疾患に拡大。自己負担額は大人の半額程度とする。このほか、医療態勢を整備して患者のデータベースを作成し、病態の解明や新薬開発につなげ、社会参加を後押しするため就労支援の充実も図る――などとしている。

「長期慢性疾患にまで広げた議論が課題」

   治療が難しい疾患は多数あり、制度開始時のスモンなど4疾患だけから、40年かけて56まで増えたとはいえ、対象になっていない難病の患者からは不公平だという声があった。助成の事業費は2013年度予算で総額1342億円と、ここ10年で倍増しているが、本来は国と都道府県の折半のところ、国が財政難で4分の1しか負担せず、都道府県の負担が重くなっているという問題もあり、今回の制度見直しになった。

   今回の改革に患者団体は、自己負担の上限月額が当初案の月4万4000円から3万円、継続して高額な医療を受ける患者は最大月2万円に抑えられことなどから、「大きな負担が出る患者は少なくなった」(伊藤たてお・日本難病・疾病団体協議会代表理事)と、一定の評価をしている。

   新たな助成対象疾患は、「患者数が人口の0.1%以下」「診断基準が確立している」といった基準で、厚労省に第三者委員会を設けて決めるが、医療費助成の対象から外れる難病も残る。このため、難病の助成制度の枠組みにとどまらず、「長期慢性疾患にまで広げた議論が課題」(患者団体関係者)との指摘も出ている。