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日本人はなぜこんなにiPhoneが好きなのか ユーザーのITリテラシーが低いから?

   日本人は、米アップルの「アイフォーン(iPhone)」が大好きなようだ。世界的には、米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」を搭載したスマートフォン(スマホ)のシェアが上回るが、日本は唯一ともいえる「例外」となっている。

   毎年、新モデルが発売されれば徹夜組が行列を作り、メディアは大々的に報じるなど注目度の高さは変わらない。国産メーカーが太刀打ちできないほどの「iPhone大国」となった背景には何があるのか。

携帯各社が「端末料金実質ゼロ円」といった優遇策をとったのも原因

日本ではiPhone人気が衰えない
日本ではiPhone人気が衰えない

   調査会社カンター・ジャパンが2014年1月15日に発表した2013年9~11月のスマホ販売シェア調査結果によると、日本はiPhoneが69.1%と、アンドロイド端末の30%を圧倒している。ところが、こうした現象は日本でしか見られない。米国はiPhoneが43.1%なのに対してアンドロイド機は50.3%。英国もiPhoneは30.6%でアンドロイド機55.7%と、欧米各国はすべてアンドロイドが優勢だ。中国やドイツに至っては、iPhoneのシェアは17%台にとどまる。

   iPhoneの影響力の大きさを示したのが、契約者数の伸び悩みにあえいでいたNTTドコモの「復活」だ。2013年12月の携帯電話3社による契約数は、新規契約から解約を差し引いた純増数で2年ぶりの首位に返り咲いた。「iPhoneなし」だったドコモは最下位がほぼ定位置で、解約数の方が多い「純減」を記録した月もあった。だが2013年9月、ソフトバンクモバイルやKDDIと並んでiPhone5sと5cを発売。当初は品薄だったが、徐々に解消していった。これが首位奪回につながったと考えるのが自然だろう。

   日本でiPhoneの人気が高い理由は、これまでも分析されてきた。しばしば挙げられるのは価格だ。携帯各社が販促のため「端末料金が実質ゼロ円」といった優遇策をとり、安い料金プランを提供するので「割高なアンドロイド」を買う意味が感じられなくなるわけだ。海外市場では、iPhoneよりもずっと安価なアンドロイド端末が普及しており、シェア拡大に貢献している。国内ではハイエンドモデルばかりで、価格でiPhoneとの違いが出せない。

   だが、それにしても「iPhoneシェア7割」という数字は圧倒的だ。ほかにも日本特有の事情が潜んでいないだろうか。角川アスキー総合研究所主席研究員の遠藤諭氏に聞くと、考えられる要因を挙げた。まず、欧米と比べて日本のユーザーはITリテラシーが低いとの指摘だ。欧米の学校におけるIT教育の素地は、日本とは比べ物にならないという。そのため、スマホ入門者にとっては比較的操作がしやすいiPhoneに流れるのではないか、と推測した。

アンドロイド本格参入前に勝負をつけていた

   アンドロイド端末の国内参入が、海外と比べて遅かったのも「iPhone独走」に影響したのではないかと話す。日本を含む世界市場で「iPhone3G」が発売されたのは2008年6月だが、欧米では初のアンドロイド端末が同年10~11月にかけて投入された。欧米の場合、初代iPhoneが2007年に出ていたが、当時は「ブラックベリー」も広く人気を集めており、必ずしもiPhoneの独壇場ではなかった。

   これに対して、日本で最初のアンドロイド端末となった台湾HTC製の機種発売は2009年5月だ。国産メーカーのアンドロイド端末投入はさらに遅れる。こうして国内では、競争相手がいない間にiPhoneがスマホの代名詞となったというわけだ。「アンドロイドが本格参入する前にブランドの確固たる地位を築き、勝負をつけてしまったのではないでしょうか」(遠藤氏)。

   周りがiPhone多数派だと、その勧めに従って「自分もiPhoneにしようかな」と流されがちだろう。加えてメディアが一般向けに紹介するスマホは、とかく知名度の高いiPhoneが選ばれる傾向にある。実際に遠藤氏は、あるテレビ番組の担当者から「iPhoneを取り上げると視聴率が上がる」と明かされたそうだ。

   角川アスキー総研が2013年1月に実施した1万人調査で、年代別のiPhoneの購入意欲をみると10代が非常に高かったという。「10代にとってはいまや、『これを買っとかなきゃ』というマストアイテムになってきている。これにより端末メーカーだけでなく、iPhoneが強すぎることによるコンテンツ業界への影響なども考えられる」と遠藤氏は指摘した。

   若年層まで食い込んでいる現状を考えると、「iPhone大国ニッポン」は当面揺るがなさそうだ。