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アイドルブームに便乗した悪質AV勧誘 オーディションで「本番はできるのか」詰問

   AV女優は地上波テレビでタレントして活躍することも増え、セクシー女優と言い換えられるなど明るくクリーンなイメージが定着しつつある。AV女優によるキスの誘惑にお笑い芸人が耐えるバラエティ番組「ゴッドタン キス我慢選手権」は映画化までされた。自ら積極的に望んでAVに出演する人も以前と比べて増えたとも言われる。

   しかし一部にはアイドルを目指す女性を騙してAVに出演させるなどの、悪質なスカウトもいまだに存在しているようだ。

数百万円の違約金を請求

   性暴力の問題に取り組む団体「ポルノ被害と性暴力を考える会」が2014年1月、「AVに出演させられそうになっている方へ」というページを同会ウェブサイトに公開した。AVスカウトの悪質なケースを紹介したもので、2000回以上ツイートされるなどネットで話題になっている。プライバシーに配慮して細部は変更してあるが、手口の巧妙さがわかる。

   芸能事務所を騙って街中で声をかけて、事務所に連れ込み契約をさせる。その後、アダルトビデオへの出演を強要して、拒否すると数百万円もの高額な違約金を請求するといったやり口だ。

   サイトに掲載されている都内大学生Aさんの場合、友人と待ち合わせていたところをスカウトに声をかけられ事務所に連れて行かれた。スカウトの口車に乗せられて契約を交わし、宣伝用としてトップレスの写真まで撮られた。契約取り消しを求めたが断られたうえ、レイプまがいの行為を受けてビデオも回され、最終的にアダルトビデオに複数回出演させられた。弁護士と相談して作品の販売中止を求めたが効果はなく、心身の傷で大学も続けられなくなった。

   アイドルに憧れていた大学生Bさんのケースは、事務所負担でレッスンをしばらく受け続け、デビューを前に事務所指定の都内マンションへの引っ越しも済ませた。ところが、いざオーディションを受けに行くとアダルトビデオの面接だった。

「本番はできるのか、アナルセックスはできるかなどを聞かれましたが、どうしたら良いのか全くわからず、知らない人たちに囲まれ、勝手にいろいろな事が決められ、最後にはトップレス姿の写真を撮られました」

   高額な違約金を請求されたり家族や学校に言いふらすと脅されたりしたが、ビデオ出演前に支援団体や弁護士に相談したのが功を奏し、無事に被害を免れることができた。

「オンラインのAV配信業をして荒稼ぎ」

   こうした悪質なAVスカウトは増えているのか。「ポルノ被害と性暴力を考える会」の金尻カズナ氏によると、昔からこのようなスカウト業は一定数存在しており、とりわけ「NOと言えない人たち」がターゲットにされているそうだ。

「金銭的に余裕のない人(学生さんを含む)、社会経験が少ない人(学生さんを含む)、過去にトラウマを抱えている人、地方から上京してきたばかりの人、そういう人たちの『心の弱み』に付け込みんで行われています」

   また最近では「アイドル=『誰でも手が届くような存在』を逆手にとって、食い物にしている人たちが一定数居ると考えています」と金尻氏は言う。

「不景気のためか、ヤクザとかかわりの少ない一般の個人や企業が、アイドルブームに便乗して、新規事業としてAVプロダクションをしたり、オンラインのAV配信業をして荒 稼ぎをしているという実態もあります」

   アダルト動画に出演させられそうになった場合は被害を未然に防ぐことが重要で、「まずは、性被害に関する支援団体、または性の問題に詳しい弁護士に相談してほしい」とアドバイスした。

「たとえ警察や行政に相談をしても、詐欺罪や脅迫罪の成立要件が高いこと、これらの被害が社会的に認知されていないために、なかなか動いてくれません」

   同会は2013年に東京・六本木の森美術館で開催された美術家・会田誠さんによる「天才でごめんなさい」展の作品が「残虐な児童ポルノ」であるとして抗議文を送ったことで知られる。その際はネットでは「ただの気に入らないモノへの弾圧」と批判する声も多かったが、今回の活動に関しては好意的な意見も少なくない。