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みずほ銀行頭取交代にみる「大甘けじめ」 「引責辞任」でもなくFG社長に居座り

   暴力団関係者らへの融資問題に揺れたみずほフィナンシャルグループ(FG)のトップ人事は、2014年4月1日付でみずほ銀行の頭取に林信秀副頭取が昇格することになった。佐藤康博頭取が取締役に降格するものの、FGの社長にとどまる。

   しかし、どうもすっきりしない。行政処分を受けたことでの引責辞任はきっぱりと否定。「降格」したはずの佐藤頭取がグループを統括する持ち株会社の社長職を辞めないのはどうしてなのか。

頭取交代は「バランス人事でもない」

暴力団への融資問題でトップが交代…(画像は、みずほ銀行のホームページ)
暴力団への融資問題でトップが交代…(画像は、みずほ銀行のホームページ)

   みずほFGがトップ交代を発表したのが2014年1月23日。しかし、そもそも今回の交代劇は発表のタイミングも唐突だったし、説明にも首を傾げたくなることばかりだった。

   みずほFGは1月17日、金融庁に2度目の業務改善計画を提出。このとき、佐藤頭取は退任を否定していた。それが1週間もたたずに突然のトップ交代だ。

   佐藤頭取は、17日にトップ交代を発表できなかった理由として、「(後任の林副頭取)本人の承諾が得られてなかった」と釈明。頭取辞任の理由については、「社会を騒がせたことに対するけじめ」と述べたが、「行政処分を受けたことの責任をとって頭取を交代するわけではない」と、引責辞任はきっぱりと否定した。

   「けじめ」をどう考えているのか、わかりにくいが、形のうえではグループトップにいることに変わりはない。

   その一方で、林副頭取の頭取起用について、佐藤頭取は「富士銀行出身ということを意識したつもりはない。林氏は国内外の経験が豊富。OBとのつながりや旧行意識がない人ということで選んだ」と、日本興業、富士、第一勧業の「旧行のバランス人事ではない」と説明した。林副頭取は国際畑に長く身を置いたため、一連の暴力団への融資問題には「無傷」だったともいわれる。

   みずほ銀行のトップ人事について、週刊ダイヤモンド(2014年2月8日号)は、「みずほのトップ人事を分けた金融庁からの『鶴の一声』」の記事中で、2013年末に金融庁側から「(次期頭取は)興銀出身ではないですよね」といった声が聞こえてきたとの、関係者の証言を伝えている。

   佐藤頭取は旧興銀の出身だから、これは「2代続けて旧興銀の出身者が頭取になることを避けるように」とのメッセージのようにも受け取れる。

   これが事実なのかははっきりしないが、金融庁に旧興銀外しの「意図」がなかったとしても、暴力団らへの融資に絡んだオリエントコーポレーションが旧第一勧銀系なので、その出身者を選ぶわけにはいかないことを考えれば、頭取候補にはおのずと旧富士銀の出身者しか残らない。

   結果的にバランス人事ではなかったのか――。そんな印象を与えることは否めない。

「委員会設置会社」のメンバーに注目

   みずほ銀行について、外資系金融機関での勤務経験のある、国際経済アナリストの小田切尚登氏は「要は、ぬるま湯なんです」と、手厳しい。

   「一般的に、日本の銀行には独特のエリート意識というか、社会の公器としての役割を重んじる空気があります。海外でも合併でのたすき掛け人事がないわけではありませんが、株主らの収益へのプレッシャーが強いため、社内の派閥争いをやる暇がないし、そんな土壌がありません。つまり、銀行といえども一企業でしかないんです。トップは収益を上げられなければ、すぐにクビです」という。

   そんな小田切氏が、いま注目しているのが6月末の委員会設置会社への移行だ。本来、監督機能と業務執行機能を分離することで、経営の透明性を図るのが委員会設置会社だが、その狙いどおりにいく保証はない。

   「(委員会メンバーを)経営トップが親しい社外取締役で固めてしまえば、結局、経営責任を問わるようなことはありませんから」

   1月23日の記者会見で、佐藤頭取は「委員会設置会社への移行後、持ち株会社の社長も辞めるのか」との質問に、「6月で辞めることはまったく考えていない」と否定。そのまま居座るつもりなのかもしれない。