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太陽光発電、悪質業者も認可されていた! 用地の真ん中に幹線道路、土地所有者の知らぬ間に申請…

   太陽光発電の事業者が、認可を得たにもかかわらず事業を開始しない問題で、経済産業省は「悪質」な事業者の排除に乗り出したが、その計画のずさんさがわかってきた。

   大儲けしたいがために太陽光パネルの値下がりを待って設置を遅らせるのはまだかわいいもので、そもそも太陽光パネルの設置が難しい場所を申請していたケースもある。また、「太陽光発電用地」として認可された土地を高値で転売しようと目論む事業者などもいるようだ。

計画実行の事前チェックなく、認可に「甘さ」

太陽光発電事業が進まない…
太陽光発電事業が進まない…

   経済産業省はこのほど、土地も設備も準備できていない571件(288万キロワット)と、調査に回答すらしていない101件(15万キロワット)の、計672件の事業者について、2014年3月からの聞き取り調査後に悪質と判断すれば、認可を取り消すことにした。

   こうした悪質とみられる「問題事業者」を排除することで、太陽光発電事業の普及を促す。

   もちろん、すでに電力を供給している事業者(1049件、110万キロワット)もいるわけで、わざと事業の開始を遅らせている事業者の「認可取り消し」は当然の措置ともいえる。

   半面、なぜ事業の実態がないと言わざるを得ない案件が続出したのかといえば、土地や設備を事前に取得しなくても計画の認可を受けられるなど、国の制度設計に甘さがあったことも否めない。

   いずれにしても、事業者のずさんな計画が横行していることは間違いないようだ。ある太陽光発電事業の関係者によると、計画用地の真ん中を幹線道路が横切っていたり、野鳥が生息する沼地だったりしてパネルの設置に適さない場所が申請されているケースも少なくなく、また土地所有者が売却を断ったのに勝手に申請してしまった事例もあるという。

   逆に、客足の遠のいた赤字のゴルフ場や山間部の牧場などに太陽光発電用地として法外な価格での購入話が舞い込むなどのバブル現象がみられたり、1kW時あたり42円で買い取る認可(12年度)を受けた土地を売りに出す、ブローカーまがいの事業者が出てきたりしている。

   そういったブローカーまがいの事業者は自ら事業を行うつもりがないため、そもそもリテラシーが低い。「送電線への接続協議などの場面では、電力事業に関連する用語が使われますが、それすらわからないでテーブルに着く事業者もありますから、話になりません」ともいう。

   そんな状況を、経産省は把握できていない。「現状では、土地が確保できていない、設備の発注が済んでいないという事実だけを把握しているので、できない理由についてはこれから(3月以降)聞いていきます」と話している。

「42円」の発電事業者が稼働しないと、買い取り価格が下がらない

   一方、太陽光パネルの設置コストは「下げ止まり」してきた。円安によって、中国をはじめとする海外メーカーの輸入パネルや部材の価格が落ち着いてきたからだ。

   経産省も「下げ止まり」を認識していて、その要因に42円の固定買い取り価格で設備認定を受けた事業者が、まだ発注せずに残っていることがあるともみている。

   現在(2013年度)は1kW時あたり36円の固定買い取り価格で設備認可を受ける時期なのに、42円の固定買い取り価格で設備認可を受けた事業者が残っているために、「本来、市場では下がるはずの建設や発電設備のコストを下げようというインセンティブが働きにくくなっている可能性がある」と話す。

   42円の固定買い取り価格で設備認可を受けている事業者を、早急に稼働させないことには、太陽光パネルの価格競争そのものを歪め、しいては電力の買い取り価格が下がりにくくなる。

   経産省は、認可事業者が1年以内に土地と設備を確保することを義務付ける方向で検討している。