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自動車保険、大手各社が今秋以降にまた値上げへ 消費増税で負担増大、「1~2%」の攻防か

   損害保険大手各社は今秋以降、自動車保険の保険料を値上げする方向で調整に入った。保険料自体は消費税がかからないが、損保会社が事故などの際に支払う保険金では修理代などに消費税がかかり、2014年4月からの消費増税の影響を受けるためだ。

   ただ、各社とも2013年に収支改善のために値上げをしたばかり。2年連続の値上げが決まれば顧客離れが加速する可能性もある。

大手損保3グループの負担増は1000億円超とも

増税で値上げか(画像は「日本損害保険協会」公式サイト)
増税で値上げか(画像は「日本損害保険協会」公式サイト)
「(消費増税は)損保業界にとって収益に直結する。負担増をどう吸収するか。保険料への転嫁は一つの選択肢として存在し、各社とも適切に判断を下されるだろう」

   日本損害保険協会の二宮雅也会長(日本興亜損保社長)は、3月20日の定例記者会見で、業界各社が保険料値上げに踏み切る可能性を示唆した。そのうえで、「保険の仕組みそのものがどうあるべきか(議論が必要)」との認識も強調し、保険料と保険金の今の構図の見直しを望む考えも示した。

   損害保険だけでなく、生命保険も「保険料に消費税はかからない」という構図は同じ。しかし生命保険の場合、保険会社が支払う保険金はあらかじめ決まっていることが多く、自動車保険の「修理代(部品代や工賃)」のように消費増税分が負担増になることはほとんどない。自動車保険の場合、全国に抱える代理店に支払う手数料にも消費税がかかるため、増税分がそのままかなりのコスト増となる。今回の消費増税によって大手損保3グループの負担増は1000億円超とも指摘されている。

コスト削減で吸収するにしても限界

   自動車の死亡事故自体は年々減っているが、若年層に比べて保険料が相対的に安い高齢者の増加、事故後遺症の長期化傾向、「支払い漏れ」解消に向けて契約者に周知徹底する各社の取り組み――などの要因が重なり、自動車保険はこのところ、赤字基調が続いてきた。

   自動車保険は損保大手の保険料収入の半分程度を占める主力事業。それだけに収益改善が必須課題で各社は昨年、1~2%程度の値上げを実施した。値上げにコスト削減効果も重なり、大手3グループの2013年4~9月期の自動車保険事業はようやくそろって黒字となった。

   確かに、1000億円超の負担増となると、コスト削減で吸収するにしても限界はありそうだ。光熱費や電車賃のような公共料金だけでなく、商品一般に広く消費増税分の価格転嫁は進む見通しであるだけに、自動車保険料の値上げも消費者に受け入れられる可能性はある。

   ただ、「昨年、値上げをお願いしたばかりで『またか』と言われる可能性も高い」(損保大手幹部)のも事実。金融界を含めて今春、各業界で叫ばれる賃上げ話が損保からは聞こえてこないのも「値上げする一方でベアが通るのかどうか」(別の損保大手幹部)という問題があるからにほかならない。

   とはいえ、「増税分の3%もの値上げは顧客離れを呼ぶだけ」との見方はほぼ共通。コスト削減を図りながら各社とも1~2%程度の値上げで足並みをそろえると見るのが順当なところか。それでも「インターネット系損保に流れるのではないか」と、大手損保には心配のタネが尽きない新年度になりそうだ。