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「米アップルは最悪の職場」の暴露続々 極端な秘密主義、驚きの社内政治活動、本当か?

   もしも米アップルに採用されたら――。「アイフォーン(iPhone)」をはじめとするヒット商品を次々と開発し、今や世界のトップ企業に上り詰めた会社からオファーが届けば、すぐに飛びつく人は大勢いるだろう。

   ところが、勤めてみたら「こんなはずじゃなかった」と辞めてしまう人も少なくないようだ。その理由の数々がオンラインニュースで報じられた。

「奥さんにすべて忘れてもらうようにしてくれ」

企業ブランド1位に輝いたアップルだが……
企業ブランド1位に輝いたアップルだが……

   米インターブランド社が毎年発表している、世界の企業ブランド価値ランキング。アップルは2013年、初のトップに輝いた。13年連続首位だったコカ・コーラを抜いての快挙だ。カリスマ創業者、スティーブ・ジョブズ氏が2011年10月に亡くなった後も、勢いが続いていることを裏付けた。

   盤石に見えるアップルだが、会社を支える社員のなかには不満を抱え、辞めてしまうケースもある。アップルならではの、特別な事情もあるようだ。

   米オンラインニュース「ビジネスインサイダー」は2014年4月6日、「職場としてのアップルの最悪な点を社員が暴露」と題した記事を掲載した。質問投稿サイト「クオーラ(Quora)」に寄せられた、元社員らの書き込みを紹介している。「最悪」の烙印を押されたひとつが、極端な秘密主義だ。ある男性は「妻に何も話せなかった」と告白する。毎晩帰宅が遅かったが、妻は男性がどんな仕事をしているかすら知らなかったそうだ。英国出張が決まった際、妻が同行を申し出ると「とんでもない」と断った。当時、妻がIBMに勤務しており、関係者に知れると面倒が起きかねないからだ。

   夫がアップルの技術者だったという女性の話は、当時開発中だった基本ソフト(OS)のプロジェクトについて、夫が上司に「どうすれば誰にも情報が漏れないか」を問われた際、夫は「妻に話している」と明かしたというもの。すると上司は、「奥さんにすべて忘れてもらうよう、何とかしてくれ。それから君も、今後一切奥さんに(プロジェクトについて)話したらダメだ」と念を押された。

   「匿名の元社員」は、徹底したトップダウンのため、たとえ改善を目指す試みでも現場レベルから「上」への動きは冷ややかに扱われると書き込んだ。「文句を言わずに長時間、懸命に働け。破たんした(会社の)仕組みを修正しようとするな。君のポジションを狙っている人が10人はいることを忘れるな」と「助言」した後で、「アップルに勤務するのは自己責任で。それから、社食は結構おいしいし、服装はラフで構わない」と皮肉交じりに加えた。

「あなたは、私のキャリアの中で最悪の上司でした」

   デザイナーのジョーダン・プライス氏は、「アップルで仕事をしたくて仕方がなかったけど、今はそうでもない」と題したブログで、アップルを退職した経緯を明かした。米ハフィントンポストも2014年2月12日付で掲載している。

   「採用面接の話がきたときは信じられなかった」と振り返るプライス氏。ところが、勤務開始早々違和感に襲われた。まず社内サーバーにログインするために大量のアカウントやパスワードの作成に迫られ、1か月も費やした。業務でも、会議の連続で生産性が上がらない。さらに直属の上司が部下に威圧的にふるまうタイプで、プライス氏にも契約更新をちらつかせながらプレッシャーをかけた。レベルの高いデザイナーと共に仕事をするのはやりがいがあったが、上司の嫌味や態度に次第に耐え切れなくなっていった。

   ある朝、ふと「アップルに入る前の生活に戻りたい」と感じた。会議を終えると上司がいつものように嫌味を言ってきた。無視したものの、腹が立って仕事に集中できない。昼食後、iPadに保存されていたデータを消去し、ファイルをサーバーに戻し、備品を机に置いて会社を後にした。辞める決心をしたのだ。上司には退職の挨拶として、こんなメッセージを残した。

「あなたは、私のキャリアの中で最悪の上司でした。これ以上、あなたの下では働けません」

   プライス氏の場合、退職の直接の原因は「イヤな上司」の存在が大きいようだ。だが同時に、企業体質として「会議続きで仕事がはかどらない」という内幕が明かされたのは興味深い。

   2009年までアップルに勤務し、「僕がアップルで学んだこと」(アスキー新書)などの著書がある松井博氏は、ジョブズ氏が亡くなった2日後の2011年10月7日にブログでアップルの企業文化について書いていた。強調したのが「社内政治の苛烈さ」だ。注目される場で「使えないヤツ」のレッテルを張られないように、問題が起きたら「隙あらばこの問題を他部署の責任に仕立てたり、『問題を早急に解決したヒーロー』になる必要があります」というからすさまじい。もっとも、常日頃から文句をつけられないほどの成果をコンスタントに上げようと必死になるというプラスの面もあるという。

   また、部下の育成はしない。「使えないヤツは早急に切り、賢いヤツと入れ替える」というわけだ。

   こうした「社風」が根強くあるのか、それとも一部の「不満分子」の極端な声なのかはわからない。しかし「iPhone」「iPad」をはじめ時代をリードする製品の開発し続けるトップ企業には、常人には計り知れないようなプレッシャーがあり、よほどタフでないと生き抜けないであろうことは想像に難くない。