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リニア、米に売り込み強化、技術の無償供与も 「損して得とれ」、官民一体で受注目指す

   JR東海が政府と一体となって推進する「超電動リニア新幹線」について、米国への売り込みを強化している。高速鉄道構想を掲げる米国で受注に成功すれば、その実績をテコに新興国などでも商戦にも好影響との思惑もある。

   JR東海は米国での受注に向け、リニア新幹線の技術を無償で供与することも打ち出す力の入れようだ。

政府とJR東海が一体で推進

海外輸出に意欲(画像はJR東海「リニア中央新幹線」のホームページ)
海外輸出に意欲(画像はJR東海「リニア中央新幹線」のホームページ)

   「建設をできるだけ早く前倒しすることが大切だ」。古屋圭司国土強靱化担当相は2014年4月19日、名古屋市での講演で、JR東海が2027年の東京・品川-名古屋間の開業を目指すリニア新幹線についてこう強調した。東海出身(衆院岐阜5区)議員としてのリップサービスも含まれるだろうが、政府が5月に策定する国土強靱化基本計画で国家プロジェクトとして位置付ける考えも改めて表明。「(リニアを)官民が連携して整備する」とも述べ、政府とJR東海が一体となってリニア計画を推進していることを印象づけた。

   ここへきてそのリニア新幹線を米国へ売り込もうとの動きも活発だ。その目玉がリニア技術の無償供与に他ならない。

   20世紀に米国内の都市間移動手段は、飛行機とクルマが格段に進化する一方、鉄道は退潮した。しかし、化石燃料を食いまくって環境にも優しくない飛行機やクルマから鉄道にシフトしてはどうか、という発想だ。具体的には首都ワシントンと東海岸のボストンを結ぶ約700キロが候補となる。日本政府とJR東海は、この中でまず着手されると見られる「ワシントン-メリーランド州ボルチモア間(約60キロ)」の受注を目指している。

従来型新幹線の売り込みも継続

   地上から約10センチ浮上し時速500キロで安定走行するリニア新幹線は、JR東海が誇る独自技術。通常ならライセンス料が発生するところだが、米国がコスト減を好感して採用し導入実績ができれば、その他の海外でも採用される可能性が高まるため、「損して得とれ」となるとの見立てだ。日本国内で進めるリニアプロジェクトにとっても、車両や軌道の量産効果でコスト低減の可能性がある。日本政府はワシントン-ボルチモア間で見込まれる約1兆円の総工費について、その半分を国際協力銀行経由で融資する方針で、まさに「官民一体」となって受注を目指している。

   ただ、米国以外への展開といっても、リニアのような「超」のつく高速鉄道を想定した構想を打ち出している国は、実はまだないのだ。国の財政基盤がしっかりして利用客も見込めるところがあるかどうか、未知数でもある。

   一方、従来型新幹線を海外に売り込もう、という動きも引き続きある。新幹線を運営する東海、東日本、西日本、九州のJR4社のほか、東芝や三菱重工業など鉄道メーカーなども含む25社・団体が参加する「国際高速鉄道協会」が4月10日に発足。米国やアジアでの受注を目指し、従来型新幹線の安全性の高さなどをアピールする。具体的にはマレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道計画などが目標。ひいては新幹線を「世界標準技術」と認識されるようにしたい、との考えだ。

   ただ、従来型新幹線が安全で速いことは知られていて、それでもなかなか受注とはいかないのも、コストが高いから。リニアにしても従来型新幹線にも増して高い。官民挙げての売り込みはいいが、コストをいかに低減するのか。克服すべき課題は大きい。