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日本人は「ファックス」が好き? 海外メディア「いまだに使ってる」と不思議がる

   ロボットや新幹線、高速ブロードバンド・ネットワークなどのハイテク技術をもち、先進的なイメージがある日本人がいまだに「FAX(ファックス)」を使っていることを、海外メディアが不思議がっている。

   日本では、ふだんビジネスや家庭などでなにげなく使っているファックスだが、じつは先進国のほとんどで「時代遅れ」とみられ、米国では「骨董品」として国立スミソニアン博物館の展示に加わるほどの代物なのだ。

家庭用ファックスの保有率12年末には41.5%

先進国でファックスを愛用するのは日本人だけらしい…
先進国でファックスを愛用するのは日本人だけらしい…

   たしかに、日本ではファックスがどこにでもある。オフィスにはほぼ100%。最近はコピー機などとの複合機が普及し、オフィスなどの省スペース化にも対応している。コンビニエンスストアにも置いてあり、お金を払えば自由に使えて便利だ。日本では、ファックスは必要不可欠なビジネスツールといっていい。

   ただ、矢野経済研究所の「出力機器市場に関する調査2013」によると、「ビジネスFAX」の2013年度(予測)出荷状況は、台数ベースで前年度比0.5%減の148万台、金額ベースで7.9%減の176億円と、減少傾向にある。

   また、家庭用ファックスの保有率も年々低下。2010年末には50%を割り込み、12年末には41.5%になった。一方で、携帯電話・PHSの保有率は94.5%(このうち、スマートフォンは49.5%)、パソコンは75.8%を占めており、固定電話の保有率も年々低下している。12年末はとうとう80%を割る、79.3%まで下がった。「固定電話を置く家庭が減っていることが、ファックスの減少にも影響している」とみている。

   こうした状況について、総務省は保有率や普及率を「海外と比べたことはありません」というが、「ビジネスでは(ファックスが)ふつうに使われているし、家庭でも、たとえば宅配サービスを注文するときなどに利用されているケースが多いようです」といい、抵抗感なく使われていることは認める。

   ところが、海外からはファックスを「ふつう」に使っている日本人が、どこか不思議に見えるようなのだ。

   日本に対する海外の反応を報道するニュースサイトNewSphere(2014年4月15日付)は、米ニューヨーク・タイムズや英ブログサイト「Global Lingo」が、日本人がファックスを愛用していることを分析。海外メディアは、日本人がファックスを愛用する原因を、「高齢化社会にある」と指摘した。

高齢者が「昔ながら」の方法を好む?

   ニューヨーク・タイムズ紙は、「高齢化社会が絶対確実な方法に執着することが、ファックスへの固執に象徴される」とし、英Global Lingoも「技術の進歩についていけない高齢者が昔ながらの方法を好むことが日本企業のファックス依存の要因ではないか」とみている。ファックスが「日本の『ガラパゴス化』につながっている」との指摘もあるし、もちろん非効率で、紙資源のムダもある。

   Global Lingoによると、手書きの履歴書や事業計画書・企画書は、先進国の中でも日本だけという。

   ただ、「日本人は日本語をこよなく愛する」ため、無機質で事務的な電子メールの代わりに手書きのファックスを送ることに、こだわっているのではないか、とGlobal Lingoはいう。「ビジネスの基本は人間関係であり、可能な限りビジネスに人間性を残そうとしている」と、好意的だ。

   また、米大手ソーシャルニュースサイト「レディット」にも、米国の保険会社や銀行でも「ファックスは健在。他企業でもファックスに頼っているところはたくさんある」と、「時代遅れではない」との声が寄せられていた。

   決して批判的なことばかりではないようだ。

   海外では、ファックスのメリットを、「電子メールと異なり、法的な文書になる」点を評価しているところもある。そう考えると、日本でも昔からの「ハンコ」文化が色濃く残る企業や、行政とのかかわりが深い企業ほど、ファックスを多用しているかもしれない。

   日本でもインターネットでは、

「使いなれてるし、壊れないからだろう。 電子データはPCやられたらおしまいだからな」
「FAXは1対1だし、相手が受信したのがわかるのがいい。電子メールは転送されるからな」

と、前向きな声も寄せられている。