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トヨタ、中国市場を再攻略 10年以内に販売倍増、200万台めざす

   トヨタ自動車が、世界最大の自動車市場である中国への攻勢を強める。今後10年以内、2020年代前半をめどに、中国での販売台数を現状の2倍以上の200万台程度に拡大させたい考えだ。

   これまで欧米メーカーのみならず日産自動車にも遅れをとってきたが、ハイブリッド車(HV)などの環境対応技術によるブランド確立を目指す。手始めに、来年には小型車「カローラ」のHVモデルを発売する方針だ。

昨年の販売台数は6位

巻き返しなるか(画像は「トヨタ自動車」中国版サイト)
巻き返しなるか(画像は「トヨタ自動車」中国版サイト)

   2013年のトヨタの中国販売は前年比約9%増の91万7000台と過去最高を更新。とはいうものの、2013年度のグループ世界販売が1013万台と初めて1000万台を超えた「世界一メーカー」としては、年間販売台数が2013年に2198万台に達し世界の新車販売の4分の1を占める中国市場での存在感は大きくない。

   成長を続ける中国市場は世界メーカーがしのぎを削る激戦区でもある。なかでも独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)が「2強」で、昨年の販売台数はそれぞれ320万台、316万台と共に300万台超えで3位の日産(127万台)を大きく引き離す。特にVWの躍進は著しく、2013年は海外メーカー首位の座を9年ぶりにGMから奪還した。

   中国では自動車需要が内陸部に広がるにつれ、購入者層の所得水準が低下しており、全体としては小型車の成長が目立つ構図となっている。小型車はもともと日本勢の得意分野だが、日本勢は尖閣諸島を巡る日中対立で反日感情が高まる逆風下に置かれ、「日本車の受け皿」の役割も担うVWが販売を拡大している。

   こうしたなかでトヨタの2013年の中国販売台数は6位にとどまっており、4位の韓国・現代自動車(102万台)、小型SUV(スポーツ用多目的車)が人気で5位に躍り出た米フォード・モーター(93万台)の後塵を拝している。

HVの「現地化」を進める

   VWやGMなど主要メーカーが、大幅増産など中国でさらなる拡大策を打ち出すなか、トヨタとしてもこれ以上の地位低下は避けたいところ。反転攻勢のカギを握るのはHVなどの環境技術となりそうだ。中国で微小粒子状物質「PM2・5」による大気汚染が社会問題となっていることも追い風となる可能性がある。中国政府がHVを購入補助対象とするのではないか、と見られているからだ。

   トヨタは2015年、カローラのHVモデルを投入すると同時に、HVの「現地化」を進める方針だ。トヨタは2005年からHV「プリウス」を現地生産しているが、基幹部品をほぼすべて日本から輸出し組み立てている。そのためコストも高く、中国人が簡単に手の届く商品にはなっていなかった。プリウスは中国市場ではほとんど認知されておらず、「充電が必要か」など日本では考えられない質問が販売店などで聞かれるという。

   来年からはHV基幹部品の現地調達を進め、なるべく早く5割程度まで現地化させると見られる。江蘇州の研究開発センターで開発した部品を現地の合弁会社で生産する構えで、コスト削減を加速。中国のHV市場はもともとゼロに近く、日本の部品メーカーに大きな痛手ということもない。ただ、海外メーカーの中国市場の浮沈には国際政治情勢という関数も絡むだけに、トヨタが首尾よくシェアを拡大できるかは、予断を許さないのが実情だ。