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ユニクロ初の一斉値上げの背景 消費者意識が「価格重視」から「価値重視」にシフト

   カジュアル衣料品チェーン「ユニクロ」が、初の一斉値上げに踏み切る。衣料品に使用される綿などの原材料高や円安による輸入価格の上昇を、製品価格に転嫁する。「デフレの勝ち組」といわれるユニクロの戦略転換は、デフレ脱却を象徴する出来事なのか。

   ユニクロを運営するファーストリテイリングはこれまで、生産の合理化などで原材料高を吸収してきた。だが新興国の需要増加によって、高品質の綿やウールの取引価格は高止まりしているという。今後もこうした傾向が続けば、採算性を保てないと判断した。

パート・アルバイトから地域正社員に転換もコスト増

「値上げ」でも客足離れず(画像はユニクロのホームページ)
「値上げ」でも客足離れず(画像はユニクロのホームページ)

   コスト増は原材料だけではない。円高局面では輸入は有利に働くが、2012年末のアベノミクス以降、為替相場は円安基調。商品の大半を海外で生産し、輸入しているユニクロの採算は悪化する。委託工場が集積する中国で、このところ人件費も上昇。ベトナム、バングラデシュ、インドネシアなどにも委託先を拡大しているが、それでも追いつかないという事情もあるようだ。

   国内では新規採用も含め、約1万6000人をパート・アルバイトから地域正社員に転換する計画だ。人件費というコストが上昇することはあっても、下がることはない。国内店舗数は840店舗で、もはや飽和状態。店舗数を拡大して量を追わない以上、1店舗ごとの売り上げを最大化させるしかない。そのために値上げは必須というわけだ。

値上げ幅は平均5%程度?

   値上げ幅は平均5%程度になる模様。例えば5705円(税抜き)のウルトラライトダウンジャケットは5990円に、1896円のセーターは1990円にする方向だという。例年取り組んでいることだが、保温性などの機能やデザイン性をさらに高め、消費者に理解を求めたい考えだ。

   値上げを決断したのは、多少価格を引き上げても、消費者はついてくるという自信の表れでもある。ユニクロは消費増税に合わせ、増税分を本体価格に転嫁した。それにも関わらず既存店売上高は4月が前年比3.3%増、5月4.1%増とプラス幅を拡大。7カ月連続で前年実績を上回っている。景気回復基調も手伝って、消費者の意識が「価格重視」から「価値重視」にシフトしているとの見方が、ユニクロの決断を後押ししたといえそうだ。

値上げは、デフレ下のビジネスモデルの転換

   ユニクロは企画・生産から販売まで一貫して手がける製造小売り(SPA)という手法を、日本のアパレルとして、いち早く確立。人件費の安い中国などの委託工場で品質面の指導をしながら「売れる商品」を大量生産し、日本に輸入して大量販売してきた。中間マージンが必要ないことも、低価格を実現できる要因。こうした低価格路線は、デフレの要因の一つとも言われる。

   値上げは、デフレ下のビジネスモデルの転換ともいえるが、思惑通りに消費者がついてくるとは限らない。他のアパレルがユニクロに刺激され、値上げに踏み切れば、衣料品におけるデフレ脱却は近づく。だが、消費者が値上げを敬遠し、売り上げが低迷すれば、価格戦略の再修正を迫られる可能性も否定できない。価格に見合った価値を提供できるのかが問われることになる。