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「脱法ハーブ」がらみの交通事故が急増 11年ゼロが、13年は38件に

   東京・池袋駅前の繁華街で車が歩道に突っ込み、歩行者が次々とはねられる悲惨な事故が2014年6月24日夜に起きた。報道によると、現行犯逮捕された自称・飲食店経営者の名倉佳司容疑者(37)は「運転前に脱法ハーブを吸った」と供述している。

   「脱法ハーブ」の蔓延に伴い、ハーブを吸った運転手が起こす事故も各地で目立つようになってきている。

たった1年で約2倍に急増

脱法ハーブ吸引後の運転による事故が増えている(画像はイメージ)
脱法ハーブ吸引後の運転による事故が増えている(画像はイメージ)

   麻薬や覚せい剤などの違法薬物によく似た成分を植物片に吹き付けたり、混ぜたりしたものは「脱法ハーブ」「合法ハーブ」などと称され、2009年ごろから日本国内で広がり始めた。吸引すれば違法薬物と同様に幻覚や興奮を覚えるが、意識障害や呼吸困難などを起こして救急車で運ばれる事例は後を絶たない。死亡例も報告されている。

   他人に危害が及ぶような犯罪を引き起こすこともある。特に、車で暴走する今回のようなケースは全国で急増している。

   2012年5月には大阪市で乗用車が商店街を暴走し、女性がひき逃げされる事故があった。報道によると運転していた男は脱法ドラッグを吸引していて、危険運転致傷罪で起訴された。大阪地裁は正常な運転ができなくなることを認識していたとして、男に有罪判決を言い渡した。脱法ハーブ吸引に起因して危険運転致傷罪が適用された全国初の事故となった。

   14年2月には福岡市の交差点で暴走した乗用車が周囲の車に次々と衝突する事故が起きた。幸い死亡者はでなかったが、10台ほどの車に絡んで男女15人が負傷した。運転していた男(36)は「脱法ハーブを吸った」と警察官に話したと報じられている。

   その多さは検挙状況をみても一目瞭然だ。警察庁のまとめによると、脱法ドラッグ(ハーブを含む)を使用した後に交通事故を起こしたとみられる事故の検挙は2011年は0件だったのが、12年には19件19人に、13年には38件40人にものぼっているというのだ。

厚労省は包括指定導入、事故罰則も強化

   脱法ハーブは「お香」や「アロマ」などとして繁華街やインターネット上で販売されている。厚生労働省の調べによれば、店頭やインターネットで脱法ドラッグを販売している業者は全国で240(13年9月末時点、都道府県報告)という。29都道府県で389業者とされていた12年3月末の数字からは減っているが、それでもかなりの数字だ。加えて自動販売機で販売するケースもある。

   国はこうした現状を重く受け止め、対策に本腰を入れている。13年には厚生労働省が成分の似た薬物をまとめて禁止する包括指定を導入。これまでは一つ一つ規制していたため、業者が指定対象の成分をわずかに変えて脱法ハーブを売る「イタチごっこ」が続いていたが、包括指定により取り締まりを強化した。

   4月からは法律も改正し、指定薬物の製造や販売だけでなく、新たに所持や使用、購入、譲り受けも禁止した。

   事故を起こした人への罰則も強化している。14年5月には自動車運転死傷行為処罰法が施行され、飲酒や薬物などの影響による悪質な運転で事故を起こした場合の罰則が重くなった。交通事故で人を死傷させた場合、従来ならば危険運転致死傷罪(最高刑懲役20年)か自動車運転過失致死傷罪(最高刑懲役7年)のいずれかが適用されたが、前者の「正常な運転が困難な状態」という適用要件の立証は難しく、適用されないケースが多かった。

   新法では「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」という適用要件の罪が設けられ、最高刑は懲役15年としている。また新たに設けられた「発覚免脱罪」は、薬や薬物の影響で事故を起こした場合に発覚を免れようと逃走した場合などに適用される罪で、最高刑は懲役12年だ。

   「脱法ハーブ」という名前からか、使用者の間に広がる認識の甘さが指摘される中、罰則強化の効果に期待がかかる。