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パイロットは65~66歳までOK 年齢制限緩和で要員不足解消へ

   パイロット不足を解消するため、航空会社のパイロットの年齢制限が今の64歳から1~2年引き上げられることになりそうだ。

   国土交通省が年齢制限の緩和に向けて検討に入っており、早ければ2015年度にも引き上げたい考えだ。

LCCでは機長が足りず減便

人員不足のLCC、高まる需要を満たせるか(画像はイメージ)
人員不足のLCC、高まる需要を満たせるか(画像はイメージ)

   パイロット不足は2012年に格安航空会社(LCC)が参入して以来、「路線網の急拡大に供給が追いつかなくなった」(航空関係者)のが原因だとされる。関西空港を拠点とするピーチ・アビエーションが機長に病気が相次いだり、新規採用が進まなかったりした影響で今年5~10月で2000便超を減便し、成田空港が拠点のバニラ・エアも退職者や病欠者が出て6月に154便を欠航した。

   LCCはコストを抑えて運賃を割安にしているだけに、パイロットを自社で育成する余裕はない。大手と比較すると十分な人材確保も困難で、LCC側からは高い技術を持つベテランパイロットの活用を望む声が出ていた。

   こうした事態を受け、専門家などがメンバーになっている国交省の有識者委員会が6月末、パイロット不足の対策案をとりまとめた。その柱となっているのが年齢制限の緩和だ。

   国交省は60歳だった年齢の上限を1996年に62歳、2004年に64歳へと引き上げてきたが、60歳以上のパイロットによる事故などが起きていないため、2015年度からの引き上げを検討し始めた。さらに60歳以上は通常の身体検査に加えて7項目の追加検査が課せられているが、引き上げに合わせて検査内容の見直しも議論するという。

抜本的解決策にはほど遠い

   一方、航空業界では2030年ごろにベテラン機長クラスが定年で大量退職する「2030年問題」が懸念されており、政府は今春から即戦力として自衛隊パイロットの民間航空会社への転職を再開した。対策案でも即戦力として外国人パイロットに焦点が当てられており、例えば、国内航空会社で機長になる場合に必要とされる1000時間の飛行経験の見直しなどを進め、国内で勤務しやすくするよう求めている。

   ただ、こうした規制緩和の動きについて、業界からは「ベテランらの活用による対症療法であり、抜本的解決策にはほど遠い」との指摘もある。パイロットが一人前になるには10年以上かかるだけに、ベテランらの活用策とともに若いパイロットの育成は急務だ。

   国交省もこうした問題点は把握しており、中長期的な対策として、航空大学校より学費が高い私立大のパイロット養成コース進学者を対象にした奨学金制度の創設も検討、育成に配慮した格好だ。ただし、「そもそも海外は国費育成が主流。高額な学費を負担してまでパイロットになりたい学生は多くはなく、日本も国費育成に力を入れるべきだ」(専門家)と国の関与を求める声が高まっている。