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自治体の寄付金獲得は「ビジネスになる」 ソフトバンクが「ふるさと納税」ポータルサイト開設

   ソフトバンクが、人気の「ふるさと納税」のサポート事業に乗り出す。2014年秋にもポータルサイト「さとふる」を開設する。

   自治体の関連業務を代行することで手数料収入を得ようというもので、今後も、ふるさと納税をビジネスチャンスとみる企業の関連事業への参入が増えそうだ。

所得税や住民税から控除されて税金が安くなる

加熱する自治体の「寄付金獲得運動」(画像は「ふるさとチョイス」のホームページ)
加熱する自治体の「寄付金獲得運動」(画像は「ふるさとチョイス」のホームページ)

   ふるさと納税は名称に「納税」という言葉が入っているが、実態は自治体に対する寄付といえる。寄付金のうち2000円を超える部分について、一定の上限までは原則として所得税や住民税から全額が控除されて税金が安くなる。つまり、実態として、自分が住む自治体に収めている税金の一部を、自分の出身地など他の自治体に振り替える形になることから「納税」の名称で呼ばれるのだ。

   総務省の資料によると、年収700万円の給与所得者(夫婦子なし)が3万円を寄付した場合、2万8000円が控除される。つまり、所得税と住民税が合わせて2万8000円安くなり、自己負担は2000円ということになる。控除額の上限は年収や家族構成によって異なる。所得税や住民税が多い人ほど控除額は大きくなるというメリットがあるが、控除を受けるには寄付をした翌年に確定申告することが必要となる。

   この制度は地方活性化や、都市と地方の税収格差を縮める制度として2008年から始まった。寄付する先は故郷だけでなく、自分とは関係がない都道府県・市町村から自由に選べる。

肉類や魚介類、米、酒類、フルーツなどがもらえる

   寄付金額を把握している自治体を調査した総務省によると、制度がスタートした2008年は寄付件数が5万4004件、寄付金額は77億円だったが、東日本大震災が発生した11年には11万362件、138億円と急伸。12年は震災反動もあって金額こそ96億円と減少したが、件数は12万1858件と増え、「制度が社会に定着しつつある」(総務省関係者)とされる。

   その人気を高め、定着させるのに最大の貢献をしたのが、お礼として自治体からもらえる豪華な特典だ。すべての自治体が特典を準備しているわけではないが、ポータルサイト「ふるさとチョイス」をのぞいてみると、寄付金額に応じた特典がずらりと並ぶ。肉類や魚介類、米、酒類、フルーツなどの特産品だけでなく、そば打ちやダイビング、乗馬などレジャーのチケットなどもそろっており、それが実質2000円でもらえるとあって、特典目当てで複数の自治体に寄付をする人も少なくないという。

   こうした人気の高まりを受け、「ふるさと納税を検討している方々へ制度や仕組みを分かりやすく伝えることにより、誰でも手軽に寄付ができるようさまざまなコンテンツを提供する」として、「さとふる」の設立が決まった。「さとふる」は寄付を考えている人にサイトで自治体の特徴や特典などを紹介し、自治体からは寄付の募集、申し込みの受付、寄付金の回収、特典の手配や配送などの関連業務を受託して代行する。

政府は控除額の引き上げを検討か

   ただ、既に「ふるさとチョイス」といった複数のポータルサイトが存在し、似たようなビジネスを展開している。いずれも特典を地域ごとや特産品ごと、寄付金額ごとに検索できるなど内容も充実しており、今では人気サイトに成長。後発の「さとふる」は、自治体とタッグを組んで新たな特産品探しや観光客招致といったコンサルティングなど独自の業務も手がけて先行組に追いつきたい考えだ。ソフトバンクグループとして、何らかの形で携帯電話を活用する案もあるという。

   ふるさと納税では収入増につながった自治体もあり、政府も来春の統一地方選をにらみ、地方重視を印象付けようと控除額の引き上げや、確定申告を不要にする仕組みの導入を検討している。自治体の中には景品競争の行きすぎを懸念する声があるが、過熱する自治体の寄付金獲得競争は「ビジネスとして魅力的」(IT企業関係者)なだけに、今後もポータルサイトへの企業の新規参入は続きそうだ。