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スバル新型WRXのライバルはポルシェ911? ハンドリングや走行安定性ではいい勝負

   富士重工業が2014年8月25日に発表した新型スポーツセダン「スバルWRX」が反響を呼んでいる。自動車専門誌は相次ぎ、WRXの特集号を出版した。

   今回で4代目となる新型WRXは最高峰の「WRX STI」だけでなく、新たに「WRX S4」というコンフォート系モデルを加え、インプレッサから完全に独立したクルマとなった。いずれも「欧州のピュアスポーツカーと比較しながら開発を進め、同等のステアリングレスポンスを実現した」(WRXの開発責任者、スバル商品企画本部の高津益夫プロジェクトゼネラルマネージャー)というから、ファンの期待は高まるばかりだ。

日産GT-Rを別格とすればライバルは国内に存在しない

ファンには嬉しい「新型WRX」の発売(画像はスバルWRX STI)
ファンには嬉しい「新型WRX」の発売(画像はスバルWRX STI)

   ライバルだった三菱ランサーエボリューション(ランエボ)が現行のXモデルで生産終了となる中、新型WRXのライバルは、日産GT-Rを別格とすれば国内にもはや存在しない。富士重工関係者によると、スバルがライバルとしたい「欧州のピュアスポーツカー」とは、ポルシェ911やポルシェケイマン、BMW Mモデルなどドイツのハイパフォーマンスカーという。

   富士重工が「社外秘」と記した関係者向け商品マニュアルには、ポルシェやBMWなどとの比較テストのデータが詳細に盛り込まれている。ドライバーがステアリングを切り始めてからクルマが回頭し始めるまでの時間を示す俊敏性(操舵に対する回頭レスポンス)のテストでは、WRX STIとWRX S4がポルシェ911彼らSと並び、0.10秒で1位。2位はスバルBRZの0.14秒、3位は三菱ランエボXの0.15秒、4位はフォードマスタングの0.17秒、5位はVWゴルフGTIの0.20秒となっている。

「コストパフォーマンスを考えると、立派に欧州車に迫ったといえる」

   高速で障害物を回避し、元の車線に戻る「ダブルレーンチェンジ通過速度」のテストでは、1位がWRX STIで時速100キロ弱、2位はわずかな差でポルシェ911カレラS、3位がWRX S4、4位が日産フェアレディZ、5位がポルシェボクスターとなっている。

   もちろん、WRXがポルシェの後塵を拝すデータもある。同じ回頭性のテストでも、「高G領域での横向き加速ゲイン」ではポルシェ911カレラSがトップで、WRX STIがBMW M3と並んで2番手。3位以下はランエボX、WRX S4、BRZと続く。「18mスラローム通過速度」はポルシェ911GT3、BMW M3、レクサスLFA、ポルシェ911カレラS、日産GT-Rの順で、WRX STIがこれに続く。

   車格や絶対的なパワー、価格を考えれば、いろんな面で差が出るのは仕方ないだろう。それでもWRXがハンドリングや走行安定性でポルシェ911と互角か、凌駕しているのは驚きだ。

   果たしてWRXはポルシェ911にどこまで迫ったのか? 自動車評論家の清水和夫氏は自動車専門誌「ル・ボラン」(特別編集版)でWRX S4をポルシェなどとテスト。「コストパフォーマンスを考えると、WRX S4は立派に欧州車に迫ったといえる」「圧巻なのはブレーキだ。直線でもコーナリング中でもWRX S4のブレーキ性能は宇宙一、つまりポルシェと同程度のパフォーマンスを持っている」と評している。

世界に熱烈なファンをもつニッチなメーカーに

   スバルが新型WRXの開発で、ポルシェ911など欧州のピュアスポーツカーをベンチマークとするには理由がある。BRZはポルシェケイマン、レヴォークはアウディS4がベンチマークだった。それは「クルマを移動手段としての利便性や経済性でとらえ、コモディティー(日用品)化する傾向が強まっている。言わば、味のないクルマが多くなっている」(富士重工の日月丈志取締役専務執行役員)からだ。

   スバルの開発エンジニア出身の日月氏は「クルマがコモディティー化する一方で、密度の高い満足感、言い換えればしっかりした味を求めるお客様が確実にいる。WRXにはしっかりした味、スバルらしい味がある」と、記者会見で自信を見せた。

   富士重工は2020年目標の新中期経営ビジョンで「大きくはないが、強い特徴をもち、質の高い企業」を目指すと宣言し、スバルの「安心と愉しさ」を磨くことで、世界にスバルファンを増やすことを狙っている。

   世界の自動車市場に占めるスバルのシェアはわずか1%に過ぎない。しかし、スバルは日本だけでなく、北米を中心に世界に熱烈なファンをもつニッチなメーカーの地位を得た。若者のクルマ離れが進み、クルマが白物家電のようにコモディティー化すればするほど、WRXのような「味のあるクルマ」が注目されるのかもしれない。