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安さ売りにした居酒屋、不振が際立つ 代表格「和民」は来客数が大幅減少

   ワタミが苦戦を強いられている。足を引っ張っているのは、居酒屋チェーンの「和民」や「わたみん家」。なかなか景気回復の波に乗れないでいる。

   同じ外食業界でも、ファミリーレストランなどは高付加価値のメニューを武器に業績を伸ばしている。「居酒屋」業態、なかでも「安さ」を売りものにしてきた総合型の居酒屋が業績不振から抜け出せないようだ。

ワタミ、4~6月期も最終赤字

「和民」や「わたみん家」は苦戦が続く...(画像は、ワタミフードサービスのホームページ)
「和民」や「わたみん家」は苦戦が続く...(画像は、ワタミフードサービスのホームページ)

   居酒屋業態の代表格といえる「和民」を展開するワタミの2014年4~6月期連結決算は、最終損益が9億9200万円の赤字(前年同期は6億1700万円の黒字)だった。営業損益は1億1500万円の赤字(前年同期は16億円の黒字)、売上高は前年同期比3%減の394億円だった。

   このうち、国内外食事業の売上高は7.4%減の164億600万円。既存店ベースの売上高は6.7%減った。業績が振るわないのは「和民」「わたみん家」など、総合型といわれる居酒屋で客数が減少したためだ。

   2014年9月9日に発表した8月の国内店舗の実績でも、売上高(全店ベース)は10.1%減、客数が13.0%減だった。客単価は3.3%増えた。既存店ベースの売上高は7.3%減だった。

   業態ごとでみると、「和民」「坐・和民」の売り上げ合計が前年比8.8%減、「わたみん家」「炭の鳥子」の合計は6.3%減と、振るわなかった。

   5月の2013年3月期決算の発表時、ワタミの桑原豊社長は「ワタミの外食事業で売り上げが伸びているのは、高単価で専門性の高い一部の業態に限られる。総合居酒屋にとっては厳しいマーケットになった」と漏らしたが、その状況が今なお続いている。

   業績回復に向けて、ワタミは外食事業の全店に占める総合居酒屋「和民」などの割合を、14年3月末の9割超から2017年度末に6割まで引き下げることを目標に掲げた。

   この4~6月期には、不採算店舗を中心に29か店を撤退。この間の新規出店は4か店で、店舗数は621か店になった。それから8月末までに、さらに減らしている。

   一方、8月末で「和民」「坐・和民」の店舗は327か店、「わたみん家」「炭の鳥子」は211か店。撤退と新業態への転換で、全店(602か店)に占める総合居酒屋の割合は89.4%と、9割を割った。

居酒屋チェーンは「供給過剰」にある

   これまでワタミの屋台骨を支えてきた「和民」「わたみん家」などの総合型の居酒屋チェーンの主な顧客層は、サラリーマンや学生。ひと昔前に比べて仕事帰りに飲む機会が減り、また若者の「アルコール離れ」もあって、この層が縮小していることは否めない。

   さらに景気の回復基調で「プチ贅沢」志向が強まり、「安さ」が売りものにならなくなった結果、お客が専門性や利便性のよい、「新業態」の居酒屋に流れはじめたとみられる。

   日本フードサービス協会によると、居酒屋・ビヤホールの市場規模は、2013年は1兆96億円。しかし、11年は9928億円、12年は9780億円と1兆円を割り込んでいた。週刊ダイヤモンド(2014年9月6日号)は「構造不況に陥る居酒屋業態」の記事で、居酒屋業態はファミリーレストランよりも新店投資がかからないため、急速に店舗数を増やした一方、市場規模が縮小したことで、「供給過剰の状態にある」と指摘している。

   そんな背景から、ワタミは2014年2月以降、「和民」や「わたみん家」以外の「新業態」を出店。「今後、外食事業を成長させていくためには細分化されたお客様のニーズを捉えるべく、専門性を兼ね備えた業態の開発に取り組んでいます」としている。

   ワタミ初の本格中華「ワンズガーデン」を皮切りに、3月に炭火串焼き「炭旬」今宮店と和食カジュアルダイニングの「炉ばたや銀政」銀座数寄屋橋本店をオープン。4月はアメリカンレストラン「T.G.I.Fridays」名古屋店、8月にはイタリアン&スパニッシュの「GOHAN」東京・六本木店と、8月末までに立て続けに7か店を開いた。

   9月8日には「炉ばたや銀政」の2号店を六本木にオープン。11月には新宿店を開く予定。また、9月30日には「T.G.I.Fridays」大阪・梅田店を、10月には東京・茗荷谷に炭火串焼きの「炭右衛門」を開くことが決まっている。

   ワタミが展開する外食店は現在、11もの業態に分かれている。

   オープンした新業態の売り上げは、いずれも好調。ただ、いまも全体の9割弱を占める総合型の居酒屋チェーンに代わって、新業態が売り上げを伸ばすようになるには、まだ時間がかかるのかもしれない。