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ネットで何でも検索できる時代 電子辞書は生き残れるのか

   セイコーホールディングス傘下のセイコーインスツル(SII)が2015年3月末で電子辞書事業から撤退する。市場が成熟して電子辞書の需要が落ちているのに加え、スマートフォンやタブレット端末の普及で需要が回復しないと見て、撤退を決めた。

   SIIは1987年に電子辞書に参入。1992年には業界初となる英和・和英中辞典の内容を全て収録した電子辞書「TR700」を発売し、フルコンテンツタイプの電子辞書の先駆けともなった。業界ではカシオ計算機やシャープに次ぐ3位グループにキヤノンとともに位置し、ビジネス向けを強みとして英語辞書などで存在感を示してきた。

ピークだった07年の483億円が13年には255億円とほぼ半減

果たして生き残れるか(画像はイメージ)
果たして生き残れるか(画像はイメージ)

   SIIの電子辞書事業は業界がピークを迎えた2007年に国内シェア15%、年間売上高80億円だったが、カシオとシャープの「2強」に割って入ることができないまま、2013年には国内シェア6%、年間売上高15億円にまで落ち込み、「需要の伸びが期待できない」(SII)と撤退を決めた。今後も製品の修理や問い合わせには対応し、有料のコンテンツダウンロードなどは続けるという。

   SIIの撤退について、ネット上では「ショック」「英語の勉強でお世話になった」「予備に最新機種を買っておくべきか」と撤退を惜しむ声が相次ぐ。ただ、「持っているけど使わなくなった」「スマホで調べるようになった」「タブレット主体になった」などと時代の変化をうかがわせる声も上がっている。

   スマホの登場はデジタルカメラや携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤーなどの売れ行きに影響を与え、各業界ともに危機感を強めているが、電子辞書も例外ではなく、出荷額はピークだった2007年の483億円が2013年には255億円とほぼ半減した。業界では「簡単な調べ物ならスマホで十分だとの認識が広がり、これからも需要の回復は望めない状況だ」との見方が大勢を占める。

小学生向けの開発などで需要を掘り起こしていく考え

   電子辞書を脅かすスマホやタブレットだが、国語・漢字辞典はもちろんのこと、それ以外にも英語や中国語、韓国語、フランス語などの外国語辞典、百科事典、現代用語事典、ビジネス・IT用語集など無数の辞典・辞書アプリが次々と登場している。それが無料か低価格で利用できるとあって利用者は急増している。電子辞書ユーザーからも「タブレットで見ると電子辞書アプリは一覧性で優れている」などの声が出ているほどだ。オンライン上の辞書も充実しており、「アプリ以前にネットで何でも検索する時代になったのが電子辞書の終わりの始まり」(業界関係者)だったという。

   電子辞書を取り巻く競争環境は厳しさが続くとみられるが、専用機として高校生向けなど一部での需要は底堅いと予測されている。また、小学校で英語教育が実施されるのを受け、利用者層の拡大が期待できるため、業界では小学生向けの開発などで需要を掘り起こしていく考えだ。