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山下智久の器物損壊容疑は起訴されない? 共同通信やフジテレビが「書類送検」避ける

   ジャニーズ事務所に所属する俳優で歌手の山下智久さん(29)が六本木で起こしたトラブルをめぐり、報道各社の表現が割れている。一般的に警察は犯罪捜査をした場合、仮に容疑者を逮捕しなかった場合や罪に問えないと判断した場合でも、捜査書類や証拠物を検察に送ることになっている。これを報道各社では「書類送検」として報じているが、山下さんのケースで登場したのは「書類送付」という言葉。

   耳慣れない言葉なだけに、「ジャニーズに遠慮したのか」といったうがった見方も相次いだ。「書類送付」と「書類送検」、どう違うのか。

口論を撮影した女性から携帯電話を取り上げる

   事件の概要は、2014年6月、山下さんが歌手仲間の赤西仁さん(30)や錦戸亮さん(29)と飲酒した後に東京・六本木の路上で通行人の男女と口論になり、口論の様子を女性が携帯電話で撮影したところ、山下さんは女性から携帯電話と取り上げて持ち去ったというもの。

   女性は被害届を警視庁に提出し、警視庁が山下さんから事情を聞くなどして捜査を進めていた。携帯電話は物理的には破損しておらず、所属事務所関係者が警視庁に届け、女性のもとに戻ったという。

   警視庁はこの事件に関連して、10月21日午前になって器物損壊の容疑で東京地検に書類を送った。山下さんと女性との間で示談が成立しているとみられ、起訴はされない見通しだ。

   各社が一連の経緯を報じるなかで、表現が「書類送検」と「書類送付」とで分かれた。「書類送付」と報じたのは共同通信、東京新聞、フジテレビ。

   東京新聞は同日朝刊の段階で「警視庁は21日にも器物損壊の疑いで、山下さんの捜査結果を東京地検に書類送付する方針を固めた」と見通しを報じており、共同通信も「捜査結果の書類を東京地検に送付した」と追いかけた。

   フジテレビは10月21日午前の「FNNスピーク」、同夕方の「スーパーニュース」、10月22日朝の「めざましテレビ」の少なくとも3回にわたって「送付」の表現を使いながら報じた。

フジテレビ、芸能人が無断撮影に不快感示すエピソードも紹介

   特に「スーパーニュース」では、若狭勝弁護士の、

「『写真を撮ってもいいですか』と聞いて『いいですよ』となって撮るのなら全然問題ないが、『ちょっと今、プライベートだから』と言っているにもかかわらず写真を撮れば、それは権利侵害になる」

というコメントとともに、キャスターが、

「スマートフォンの普及で気軽に芸能人の写真を撮影することによるトラブルが後を絶たない」

として、きゃりーぱみゅぱみゅさん(21)、市川海老蔵さん(36)らが無断撮影に不快感を示したエピソードを紹介。山下さんの容疑については論評を避けた。

   フジサンケイグループ内でも、新聞とテレビでは対応が分かれた。産経新聞は10月21日の大阪本社夕刊と翌10月22日朝のサンケイスポーツに共同通信の記事を掲載し、「送付」と報じたが、22日朝の産経新聞東京本社版では独自記事で「書類送検」とした。産経新聞の本紙は大阪では朝夕刊が発行されるのに対して、東京では朝刊しか発行されていない。

   この件を報じたメディアの中では、実は「送付」は少数派で、産経新聞東京本社版以外には、朝日新聞、日本テレビ、時事通信が「書類送検」という表現を使っている。

立件可能かどうかが、ひとつの判断基準?

   共同通信社総務局の説明によると、「書類送付」と「書類送検」の手続きの内容は同じだが、立件可能かどうかが、ひとつの判断の分かれ目になるようだ。

「警察などは原則として捜査したすべての事件を、最終的に刑事処分を決める検察官に送りますが、このうち、逮捕せずに任意で捜査した場合、関係書類や証拠を、検察官に送る手続きを書類送検と呼んでいます。しかし、捜査したものの、罪にはならない(罪を問えない)、嫌疑が不十分と警察が判断し、そうした意見書などを付けて検察に書類を送る場合もあるわけで、その場合『書類送付』としています。書類送検と書類送付とは手続きとしては同じですが、『書類送検』と書くと犯罪性がありとの印象を与えるため、それと区別するため、『送付』という言葉を使っています」

   山下さんの容疑の内容自体は、著名人でなければ記事にならない程度の軽いものだとみられる。実際、日本テレビとフジテレビ以外の民放キー局3局、NHK、読売、毎日、日経は記事化を見送っている。