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高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「小泉郵政選挙」のように野党埋没 「消費増税先送り」賛否を明確にせよ

   解散風が実際に吹き始めると、オロオロする人が結構多いのにはびっくりした。実は、11月と12月は解散が多い月だ。戦後25回の解散(任期満了の1回を含む)があるが、11月解散3回(1972年、83年、2012年)、12月解散5回(1945年、48年、66年、69年、76年<満了>)で、12月は最多月で、次いで11月などが続く。

   衆院の任期は4年だが、実際には任期満了の前に解散が行われることが多く、戦後では平均2年9か月である。このため、2年を過ぎるといつでも解散しても不思議ではないといわれている。

「首相外遊中」を意識したタイミングか

   こうした事情もあり、一部では年内解散がかなり以前からいわれていた。筆者も、先(10)月に自分のコラム(政策工房)で、11月19日(大安)解散-12月14日(友引)総選挙の日程に触れ、「解散風が吹いてきた」と指摘した。

   解散権は首相の専管事項であり、誰も口出しできない。小泉政権で実際に解散を目の前で経験してきた筆者としては、首相は誰にも相談しないで1人で考えていたという印象だ。1人だけで、または相談しても相手は1人のはずだ。2人であれば、秘密が漏れることはない。政治の世界では、3人以上に話すと、漏れるというのが常識だ。ただし、近くにいると何となく分かることはある。

   今回、安倍首相は外遊中である。このタイミングを意識して、おそらく3人以上に話をして漏れるようにしたのではないだろうか。安倍首相が「考えていない」といっても、各紙では「検討中」などと書く。これは、解散について首相はウソを言ってもいいからだ。

野党は対立軸をどう打ち出すのか

   安倍首相が帰国する11月17日まで、すべては憶測の話だが、それらが独り歩きする。そして、自己実現的な結果になるだろう。

   野党の選挙準備が整っていない。民主党の衆院議員候補予定者は現職を含めて130人程度と、前回選挙から約2年がたった今も全295小選挙区の半分も埋まっていない。野党にとっては、この機会に選挙協力と行きたいところだが、自民党が消費増税の延期とでてくると、野党は増税実施連合でないと対抗できなくなる。

   ここで思い出すのが、2005年8月の郵政解散だ。そのとき、自民党の郵政民営化に対して、自民党内からの造反も出たが、野党民主党が賛成なんだか反対なのか分からず、埋没してしまった。今回は、自民党内からの造反が出るかどうか、野党が消費増税に反対なのか、賛成なのか、興味深い。

   マスコミ、特に新聞各紙は、軽減税率が欲しいために消費増税賛成の立場であろう。そのため、消費増税を争点とする総選挙を歓迎していないようだ。民意を問う絶好のチャンスにもかかわらず、選挙でカネがかかるなどと、つまらない「いちゃもん」を付けているのが笑える。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。