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「自撮り棒」うっかり使用で違法行為に 使ってはいけない製品はこう見分ける

   スマートフォン(スマホ)を使って自分を撮影する際、手の届かない離れた距離から写す器具「自撮り棒」の人気が高まっている。

   無線機能を使って棒とスマホをつなぎ、撮影する仕組みの製品もあるが、国内では電波法の規制対象になる。法令をクリアした製品でないと、使用者が違法行為に問われる恐れがある。

「技適マーク」付いていないと罰金100万円、懲役も

iPhoneの画面に表示される技適マーク(写真下、一部抜粋)
iPhoneの画面に表示される技適マーク(写真下、一部抜粋)

   インターネット通販で販売されている自撮り棒を見ると、一般的な製品は伸縮型の棒が最長1メートル程度伸び、先にスマホを固定するホルダーが付いている。中には、近距離無線通信規格「ブルートゥース」機能を使ってスマホと接続し、棒の手元に付いているボタンを押して「遠隔操作」でスマホのシャッターを切るタイプもある。混雑している場所で頭上から撮れたり、地面スレスレから写して背景を入れたりと撮影のバリエーションが増え、自撮りを楽しむアイテムのひとつとして注目されている。

   ひと足先に海外で人気に火がついた。2014年11月26日放送のフジテレビ「スーパーニュース」では、香港からの観光客が東京・浅草で撮影している様子を紹介。米タイム誌は「2014年の発明品ベスト25」のひとつに選んだという。韓国でも大ヒットしているが、ブルートゥース内蔵の製品は通信を行うため、政府の適合認証を受けなければならない。正規品には認証マークが付くが、認証を無視して安く販売されている非正規品が増えているという。韓国政府は取締りに乗り出し、不正な業者に対して最高3000万ウォン(約320万円)の罰金または最高3年の懲役が科されることになるそうだ。

   日本でも、こうした自撮り棒は電波法の制限を受けるため適合認証を受けなければならない。総務省によると、一般に使用する無線機のほとんどに「技術基準適合証明等のマーク」(技適マーク)が付いており、そうでない製品の使用は違法になる恐れがあると注意喚起している。具体的には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象」となる。

   技適マークのない製品の利用が増えれば、知らないうちに他人の通信を妨害したり、ひいては社会生活に混乱をきたすことになりかねないとして、総務省は使用を控えるよう呼びかけている。

ディズニーランドでは使用不可、改造にも注意

   身近な製品で「技適マーク」が付いているものといえば、スマホだろう。例えば米アップルの「アイフォーン(iPhone)」の場合、かつては電話機本体の裏側に印字されていたが、その後の法改正でディスプレーに「電磁的表示」ができればよくなったため、現在ではソフトの「設定」をいじることでマークを画面に写し出すことができる。

   自撮り棒を販売しているネット通販業者の中には、製品ページに「本商品は技適マーク取得製品」との記述と共に登録番号を示したり、認証を受けた際の書面を掲載したりしているところもある。

   一方で、使用に関しては注意点もある。東京ディズニーランドでは園内の安全確保の観点から、三脚などの撮影補助機材の持ち込みを禁じているが、先述の「スーパーニュース」によると自撮り棒も含まれると説明。また飛行機の機内での使用も不可だという。さらに技適マークのある製品でも、電波法第38条の7第4項に、「特定無線設備の変更の工事をした者は、総務省令で定める方法により、その表示を除去しなければならない」との規定があり、みだりに改造すればマークを外さねばならなくなるのだ。マークなしでそのまま使い続ければ、当然違法行為となろう。

   総務省では、2020年の東京五輪に向けて訪日外国人が増えると見込まれることから、日本の認証を受けていない海外製の携帯端末を国内で使えるよう2015年にも技適の規制を緩和する方針だと2014年8月20日に産経新聞が報じた。来年の通常国会に電波法改正案を提出するという。スマホ同様、ブルートゥース内蔵自撮り棒も範囲に含まれるかもしれないが、仮にそうなれば海外で出回っている非正規品が規制の網の目をくぐり抜けて国内に入ってくる恐れが高まるかもしれず、対策が望まれる。