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イスラム国「身代金要求」に日本は応じるのか 過去には機密費から支払ったと報じられた例も

   イスラム国による日本人人質問題で、日本が身代金支払いの要求に応じるのかが注目を集めている。過去には、身代金を支払ったと報じられたケースもあるからだ。

   身代金を支払わなければ日本人2人を殺害するというビデオ声明は、安倍晋三首相がイスラエルに滞在していたタイミングに合わせたように行われた。

日本の外交官が意味深なことを述べたと米紙

身代金要求にどう対応?
身代金要求にどう対応?

   安倍首相はそこでの会見で、2億ドル(約236億円)はあくまでも難民支援のためだと強調したうえで、「人命を盾に脅迫する許し難いテロ行為」だと強い憤りを示した。しかし、アメリカなどが主張するような「テロリストとは交渉しない」といった強硬な表現は取らなかった。その代わりに、「人命尊重の観点から、対応に万全を期すよう指示した」「国際社会は断固としてテロに屈せず対応していく」と述べた。

   人質問題では、アメリカやイギリスは、身代金を支払っていないとされ、人質が殺されるケースも度々出ている。これは、身代金は支払わないとした国連安保理の決議にも沿ったものだ。

   一方、フランスやスペインなどは、公表はしていないものの、身代金を支払うこともあるとされる。人質が解放されたケースなどは、そのことが指摘されてきた。

   日本も、過去には、日本赤軍による1977年の日航機ハイジャック事件で身代金を支払った例はあった。しかし、政府はその後、イスラム過激派などへの身代金支払いについては否定し続けてきた。

   真相は定かでないが、日本政府が身代金を支払ったと報じられたケースはある。

   例えば、共同通信の08年12月29日付記事によると、イランで誘拐された横浜国立大の男子学生がこの年6月に解放された事件では、政府は解決のために「外交機密費」から約2億円をイラン側に支払ったと、政府関係者が明かした。

   米ワシントン・ポスト紙によると、今回の事件でも、日本の外交官が意味深なことを述べたというのだ。

ネットでは、応じるべきではないとの声多く

   この外交官は、身代金を支払わないのが建前だとしたうえで、過去のいくつかの事件では支払ったかもしれないと明かした。そして、「今回についても、どうなるか分からない」と含みを持たせたという。

   イスラム国が要求した2億ドルというのは、日本の支援額を意識したとみられている。しかし、報道などによると、身代金の相場は1000万ドル(約12億円)ほどとされており、かなり法外な額だ。イスラム国は、この1年で3500~4500万ドルの身代金を得てきたといい、今回は、1回分でその額さえ上回る要求ということになる。

   その意図については、一説では、イスラム国は現実的に支払われる金額とは考えておらず、アメリカの同盟国に揺さぶりをかける狙いとされる。その場合は、人質は深刻な立場に立たされるかもしれない。

   一方、あくまでも吹っかけた額であり、交渉によってかなり下げることもできるのではとも指摘されている。

   報道によると、人質に取られたジャーナリスト後藤健二さん(47)の妻に14年末ごろにイスラム国からメールが送り付けられ、20億円ほどの身代金が要求されたと、政府関係者が明かした。日本政府は、後藤さんが人質になったことを知っていたとされ、その場合、イスラム国との交渉がうまくいかなかった可能性がある。とすると、今回、その額を支払うなどすれば、人質が解放されることもありえるかもしれない。

   とはいえ、日本にはイスラム国とのパイプはほとんどなく、その過程をイスラム国に暴露されるなどのリスクも残っている。ネット上でも、日本は身代金の要求に応じるべきではないとの声が多く、最終的には「政治決断」にゆだねられることになりそうだ。