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銀行が求めるのは「聖域なきリストラ」 崖っぷちシャープ、実行できるか

   経営再建中のシャープが、主力取引銀行であるみずほ、三菱東京UFJの両行に対し、資本面での支援要請に追い込まれた。主力の液晶事業が伸び悩んでいるほか、テレビや太陽電池も不振。リストラを行うと赤字が膨らみ、債務超過に陥りかねないため、銀行による強力なバックアップが不可欠という厳しい状況だ。

   経営不振の表面化から3年。業績回復の兆しもあったが、結局、黒字は2014年3月期の1期だけで、再び赤字に逆戻りすることになり、まさに崖っぷちに立たされている。

財務の健全性を示す自己資本比率は10%程度

「銀行によるバックアップ」が不可欠(画像はシャープのホームページより)
「銀行によるバックアップ」が不可欠(画像はシャープのホームページより)

   シャープは2015年3月5日、2行に対して1500億円規模の資本支援を求めた。具体的には、借金の一部を、返済せずにシャープの優先株など株式に交換してもらう「デット・エクイティー・スワップ(DES)」という手法を想定している。財務の健全性を示す自己資本比率は10%程度で、健全の目安とされる20%を大きく下回っており、資本不足のため、追加のリストラも十分にできない状態だ。

   14年12月末現在の有利子負債は約1兆円。その一部についてDESが実現すれば、借金を圧縮でき、併せて資本も厚くなる。だが、銀行にとっては株主責任を負うことになるためリスクは大きい。特にDSEで株式が増えれば1株当たり利益が希薄化という株価下落要因になり、簡単に首を縦に振るわけにはいかない。確実に実現可能な再建計画をシャープが打ち出すことが、最低限の条件となる。

   2015年3月期の連結営業利益予想は500億円。2月上旬、従来予想の1000億円から大幅に下方修正した。最も足を引っ張っているのが、液晶テレビなどのデジタル情報家電部門で、120億円の赤字(前期は89億円の黒字)になる。太陽電池などのエネルギーソリューション部門も50億円の赤字(同324億円の黒字)だ。

主力の液晶パネル部門は激しい競争に巻き込まれる

   他の部門は営業黒字だが、前期から黒字額が増えるのは、スマホなどの通信部門のみ。主力の液晶パネル部門は、ジャパンディスプレイや韓国LGなどとの激しい競争に巻き込まれ、前期比15億円減の400億円に。白物家電などの健康・環境部門は円安の影響で輸入採算が悪化し、黒字額は同30億円減の180億円の見込みだ。複写機などのビジネスソリューション部門や、電子デバイス部門も黒字額が減る。2014年3月期は全部門が黒字だったため、経営陣に安堵感が生まれ、構造改革が遅れたとの指摘もある。

   当期純損益は300億円の黒字予想から一転、300億円の赤字に転落。今後のリストラ次第で、1000億円以上に膨らむ可能性も出てきた。

   業績不振の責任の一端は、銀行側にもある。2012年3月期、2013年3月期に計9000億円もの巨額赤字を計上したシャープの再建過程で、銀行はシャープに役員を送り込み、再建策の策定に関わってきたからだ。融資を膨らませてきた以上、銀行にとっても「引くに引けない」状況となっているともいえる。

   銀行が求めるのは「聖域なきリストラ」だ。シャープは海外の液晶テレビ工場売却などを検討しているが、それにとどまらず、太陽電池事業の大幅縮小・撤退や、電子部品工場の閉鎖・再編など、事業のポートフォリオの抜本的な見直しも議論になる見通しで、人員削減という痛みが伴う。

   シャープが新しい中期経営計画を発表するのは5月。銀行や投資家が納得する計画を示すことができるのか。残された時間は少ない。