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盗用疑惑に「ダンマリ」「会見もなし」 佐野研二郎氏の対応、これでいいのか

   2020年の東京五輪・パラリンピックの公式エンブレムなどのデザインをめぐる一連の盗用騒動で、デザイナーの佐野研二郎氏(43)が「ダンマリ」を決め込んでいる。

   佐野氏のデザインをめぐっては五輪エンブレムのほか、多摩美術大学の広告ポスターなど、新たな疑惑が次々とインターネットなどに取り上げられている。盗用の指摘が事実かどうかを含め、佐野氏の「言い分」を自身の声として聞くことは不可能だ。

  •  佐野氏が公の場に姿を見せなくなって1か月・・・
    佐野氏が公の場に姿を見せなくなって1か月・・・
  •  佐野氏が公の場に姿を見せなくなって1か月・・・

電話は通じず、メールの返信もない

   五輪エンブレムがベルギーの劇場のロゴと類似していると指摘された問題で、デザイナーの佐野研二郎氏が記者会見を開き、姿をみせたのは2015年8月5日だった。

   席上、佐野氏は「そもそも作品を見ていないので模倣ではない。まったくの事実無根」と、盗用をきっぱり否定。「誓って言うが、アートディレクターとしてこれまでの知識や経験を集大成して仕上げた作品」「世界に類のないエンブレムができたと確信した」と、胸を張っていた。

   ところが、サントリーのトートバッグのデザインへの疑惑に、佐野氏は8月14日に自身のデザイン事務所MR_DESIGNのホームページでコメントを発表。「一部について第三者のデザインをトレースしていた」と盗用を認め、「私自身のプロとしての甘さ、スタッフ教育が不十分だった」と謝罪した。

   さらに、東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会が、佐野氏が制作した公式エンブレムの使用を中止することを発表した9月1日の記者会見にも、佐野氏の姿はなかった。

   このときも佐野氏はホームページで、「模倣や盗作は断じてしていないことを、誓って申し上げます」と、改めて否定のコメントを発表しただけだった。

   「一部のメディアで悪しきイメージが増幅され、私の他の作品についても、あたかもすべてが何かの模倣だと報じられる」ようになってしまったと説明。それに対する批判やバッシングに「もうこれ以上は人間として耐えられない限界状況」と、心境を綴ってもいた。

   デザイン事務所のホームページも9月1日の文書が貼りついたまま。佐野氏自身も公式には姿を見せないままだ。

   そんな佐野氏の態度にインターネットでは、

「会見するとボロがボロボロ出ちゃうから?」
「逃げれば逃げるほど、怪しまれますよwww」
「佐野氏はしっかり会見を開いて説明すべき。エンブレムの作成過程や、そこに込めたメッセージ、デザインの意味を本人の口から言うべきだった」
「公の場に出てきて説明するまで、ずっとパクリ疑惑のことを言われ続けると思う」

などと、佐野氏に批判的な声や記者会見を求める声が寄せられている。ネットユーザーも、どこかスッキリしていないようだ。

   J‐CASTニュースは佐野氏に取材を申し込もうとデザイン事務所に何度か連絡したが、電話は通じず、メールの返信もない。

佐野氏が教授を務める多摩美大も「ダンマリ」・・・

   そうしたなか、佐野研二郎氏の母校で、教授を務める多摩美術大学も「佐野先生の件に関しては、一切コメントをしないという方針が決まりました」と話す。学内の話し合いで、そう決まったようだ。

   いずれにしても、周囲を含め「ダンマリ」を決め込むとなると、佐野氏自身からの釈明は今後、聞かれないことになる。

   こうした佐野氏側の対応について、企業アナリストの大関暁夫氏は「企業広報の不祥事対応として、一番やってはいけないことですね」と、手厳しい。

   大関氏は「広報対応でやってはいけないことは、『逃げ』と『怒り』」という。「そもそもは会見の対応が不十分で、きちんと説明していないために疑問が残り、メディアに追いかけられているのですが、そのことを自覚していません。(9月1日の)文書も『メディアが悪い』と、逆切れとも受け取られかねない文言があって、彼の中に怒りがあることがうかがえます」と指摘する。

   記者会見は開かず、電話やメールも通じず、外部からの「声」を一切遮断してしまおうといった佐野氏の姿勢に、大関氏は「まだ間に合うと思いますよ。きちんと会見を開いて、事実は事実として伝え、謝罪すべきところは謝罪しないと」と諭す。